モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

11.三女



「悪口を言ってその人がすっ飛んで来てくれたらどんなにいいか。やめにしようじゃないか」イフィーヌは自分の籠手を外しはじめた。「ああ窮屈だった。早くごはんにして休もう」闇色の籠手から黒い肌の腕を取り出し、五本の指を曲げ伸ばしした。「お肉にしがみつきかぶりつきでてっとり早く済まそう」イフィーヌが笑顔を浮かべた。

「ごはんの支度、しなくていいんだ」メナンドーサもつられて笑顔を見せた。と彼女はしゃがみこんだ。

「疲れてるんだろ、よしな」妹メナンドーサは床の扉を開けようとしているが、力をこめた呻き声に対して扉の反応は冷たい。「飲む物を取り出すつもりなら物覚えが悪いね。まったく飲みきれないからってダルトに変えてしまったじゃないか」

「嘘つかないでよ。全部お金に変えてどうすんのさ」メナンドーサは早く倉庫の中を確かめたい。「目ぼしい物はあの人が持っていったよ」

 聞いてメナンドーサは倉庫の中身を自分から拒絶した。扉は夜中に大きな音を立てて再び床にはまり込んだ。「あの人そんなに呑むの!?」

「路銀にでも変えたんだろうさ」イフィーヌは自分の汗をぬぐい始めた。すでに脚絆も脱ぎ終わっていて裸足だ。

「いったいどこまで旅してんのよ。こんな母親存在すんの。赤ん坊まで置いてってさ」メナンドーサは両腕の籠手を打ち合わせた。

「メナンドーサ、いない人の悪口を言ってどうする!」イフィーヌは拳を振り上げた。(籠手が付いていなくて良かった)とメナンドーサは刹那に思った。

「今のは無しにしといてやるよ。メナンドーサがドローネのことを心配するなんてね」イフィーヌはもう一度笑って見せた。

「え? え? そ、そりゃあ、あたしもお姉ちゃんだもん」身構えて目を堅く閉じていたメナンドーサは気をとりなおした。「馬鹿な妹でも気を使わなくちゃならないのがお姉ちゃんでしょ」

「そんなことはないよ。馬鹿だから可愛く世話を焼きたくなるものだよ、妹はね」メナンドーサのことを見つめる目が笑っている。メナンドーサは耐えられず苦い顔になった。

「ふん、しかし、赤ん坊に対して馬鹿も利口もあるもんか」イフィーヌは豊かな紫の頭に手をやって髪をすいた。

「絶対馬鹿だよ、あいつ。母さんがいなくなってもにこにこしてる」

「夜泣きされるより絶対にましだ。お前、ドローネの世話を嫌がっていたろ。おしめなんてって言ってさ」

 言われてメナンドーサの表情は一層ひどくなった。「あたしの顔におしっこをかけてもにこにこしてるんだから。本当に、あいつは、」

「お前がそんなことを言ってるから庄屋に預かられてしまうんだ。楽になったろ?」イフィーヌは撫然とし始めた。

「今日は会えると思ったのになあ」「勝手なお姉ちゃんだねえ。しかし庄屋のお世話になりっぱなしなのはまずいね」「向こうが申し出たことでしょ、面倒事をどんどん押し付けてやるべきだよ」

「いいや注意を払っておくべきさ。今日もこれしかもらえなかったんだからね」イフィーヌはこんがり焼き上がった肉を指した。巨大な紙包みである。姉妹二人が何倍になろうと食べきれないだろう。