モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

10.帰宅



 メナンドーサは歩きながら自分の獲物に頬を寄せている。寄せているつもりである。馬の鞍の上にうず高く積まれた荷に彼女の背が届くはずもない。馬の轡を取っているのはイフィーヌ。

 二人の浅黒い肌の姉妹は闇に溶けるがごとく静かに歩を進めていた。馬は彼女たちに盲従し、蹄の音を低く響かせるに留めている。周囲のそこかしこの闇の中ではあまたのモンスターが跳梁を始めているに違いない。

 二人は静かに確実に村の片隅にたどり着いた。村の中心部が騒がしいのは先に彼女らと別れた大人たちが先に帰り着いた証だろう。

「ただいま」勝手を知った場所の前でイフィーヌは声を出した。「誰もいないよ」メナンドーサが答えた。

 イフィーヌは馬を繋ぎ、メナンドーサは秣を取り出す。「うふ、古いものなのによく食うね。お腹すいてるもんね」メナンドーサは共感を覚えて嬉しくなり、勢いで姉に声をかけた。

「実はさ、冒険局に行ってたんだけど、怒る?」

「母さんのことを調べてたって言いたいんだろ」イフィーヌは暗い家に最低限の灯りを入れて回っている。

「そうそう! お母さんはどんなミッションも受けてないよーって言われた」

「メナンドーサ、荷を解いてないんじゃないのかい」「いけない」メナンドーサは外へ飛び出して馬をなだめ、素早く大荷物を運んできた。

「ああ!」メナンドーサは全身を使って包みを下ろすと背中を大げさに曲げた。

「なにを張り切っているんだい。馬鹿だね」「あたし、辞書も使って調べたんだから。嘘じゃないと思うんだ」妹は姉に構わず喋った。

「局員と喧嘩したのか。悪い癖だ」イフィーヌの表情がきゅっと鋭くなる。「違うよぉ。そういうのはどっちかと言うと」メナンドーサは姉の紫の眉から思い出すものがある。

「そうだね。あの人は局員を脅しつけてまで私たちを欺こうとするかも」

「母さんに向かってあの人だなんて、ひっぱたかれるよ」メナンドーサは周囲に母親の影がないのをゾールに感謝する。