モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

1.成果



「寝床をとっかえたって面白くはならねぇよな。どんなゲームなんだ? ここが寮みたいなもんなら隣同士ほとん
ど一緒なはずだぜ」少年は一人用の椅子を見つけて座って言った。

「じゃあ宝探しかい。このあたいはちょっとやそっとのもんじゃ驚かないよ」少女は言った。

「だからシャットちゃんに決めさせてやろうって言ったんだ。寮といっても部屋の主はすぐ取っ替え引っ替え船に乗
って出ていく土地だからね、共用みたいなもんさ。置いてあるもんは新しい主が自由にがめていいんだ」主人
は言った。「おー、当たった当たった」ノーラは喜んだ。

「へーえっ」シャットは座りながら部屋を素早く見渡す。薄暗い一室にシャーズの瞳は輝く。「泊まってんのは
酒場の給仕かい」

「給仕だけじゃないよ。料理人や売り子、人夫や船員その他もろもろ、雇い人はいっぱいいるんだ。あとたま
にゃあ外の天幕からあぶれた兵隊だって泊めてやる。ここはどんなことになるかわかんない基地だからね。ふん
だくれるいい機会さ」

「ちぇっ、シャット君が商売の話どころじゃなくなったじゃないか」ノーラは小さな相棒を見る。

「いやいや、うまい話だから気をつけてんのさ。本当に取っても訴えられないのか?」シャットは部屋を物色して
いた。歩き回ることだけこらえて。

「はははっ! 大したもんはないからね。そういうもんはみんなしっかりと船に乗せて持って帰ってるさ!」ティアラ
は太い腹をゆすった。

「おばちゃん、ちょっと待っててくれるう。もう、早くやれよ。おっと、夜中だからね、静かにな」内心をすっかり隠
せなくなった子分にノーラは命じる。

「あいよっ」シャットは潜めた声で応えて大人用の椅子から飛び下りた。

「ほう、足音をさせないね」「こいつはできるよ。あたいの苦手なことが得意なようだから見込んでんだ」二人の
シャーズ女はシーフの少年の動き回るさまを観察する。

「ここは仕掛けをしてもいいのかい」シーフは建物の主人に訊いた。

「隠し金庫があると思ってんのかい」赤く小さな火が返事をした。ティアラは部屋の唯一の椅子を自分のもの
にしており、そこで煙管をくゆらせていた。「すぐ交代していくんだって言ったろう。あとから入るもんが使いにくくな
るような変な模様替えはあたしが許さないよ」

「そっか」ノーラが少年に先んじて返事をする。(じゃあ、この下にありそうだな)少女は寝台に座る場所を求め
ていた。

「あ、こっちに来やがる」ちょうど心を読んだみたいに足早にシャットが近づいてくる。貴族は平民に命じられて
立たされた。

「ないない。本当に大事なもんは動かして帰ってくとも言ったじゃないか」挑戦者たちのあては外れた。

「凝った考えはするだけ無駄だってさ。早く商売の話に入ろうじゃんか」

「ちぇっ」シャットはノーラにせかされ机を調べた。調度品の少ない簡素な部屋だ。

「おっ……と」夜中に小さな声が上がった。「なんかあったか!? 見せて見せて!」ノーラは狭い部屋でシャ
ットに駆け寄る。

「すげえ、金貨袋だ」少年は重たげな袋をゆすった。厚手の皮が底が抜けるのをなんとか防いでいる。

「ほ……本当にただでもらっていいのかい。本当に何もないだろうな」

「金を払って金を手に入れる話があるわけないじゃんか」とノーラ。

「そりゃ部屋の主が置いてったもんだからね。しかしずいぶん強運だ。でも、ここを受け継ぐって決めるまでは誰
のもんでもないよ、ちびすけちゃん」

「そ、そりゃそうだよ、わかってる。ちゃんと落ち着いて中身を確かめねえとな」言うが早いかシャットは金貨の袋
の紐を解いて内容を机の上にこぼれぬように転がした。

「ん、なんだ、ダルトじゃないの」ノーラは言って机の上のランタンを近づける。どの硬貨にも銀貨の刻印が見て
取れた。

「はは、思い込みだね。アルシャをほっとくもんはいないだろうさ」ティアラは煙の向こうで笑った。

「なんだって言うけど十分だよ……。儲かるんだなあ。これだけ家を空けて、どれだけ叱られるかぞっとしなかっ
たけど、取り引きに使えそうだ」

「取り引きねぇ」とノーラ。