モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

2.つまらない男



「ああ、銀貨だったから頭も冷えたし、落ち着いてもっと探すぜ」シャットは次に箪笥に取りかかる。

 彼の気を惹くものはまたすぐに見つかった。

「すげえ、《ナイフ》だ」固い鞘に納められた短刀。少年が抜き放つと冷ややかで美しい刀身がこぼれる。「持
ちやすいなぁ」

 剣を構えようとして少年は自らのいでたちを思い出し、箪笥の中をさらに探った。大人用の衣服が少々残さ
れていたが、それを掻き分け彼はベルトを見つけ出した。

「へっ、強そうだ。闘技場のビキニアーマーの女戦士みたいだよ」ノーラは水着を着たきりの少年をからかった。
「ちぇっ、メルバの試合を見逃したのを思い出しちゃった。そういえば、娘がいたな……」

「誰?」「その親子」

「なんだい、二人とも知らないの。シャット君は席を買ったことがないとして、おばちゃんは熱中してなかったか
な。流れを読む勉強になるとか言っちゃってさ」

「やだね、そんなにやっちゃいないよ。言われてみたらブルガンディが懐かしいくらいだ」

「ほら、黒い肌に頭は金の髪の滅法強い男だよ。ヒューマンのさ」

「なんだ、ヒューマンの選手なんて覚えちゃいないよ。みんな丸い耳が横についてちゃ見分けがつかない」

 ノーラは笑う。「うそだあ。強すぎていつもど本命なくらいのやつだよ」

「ああ、あいつか。つまんない男だね」

「あはは、強さがお金のお墨付きだってことだよ! あたいは配当や種族より実力が好きだな!」

 話題のわからないシャットは《ナイフ》の吟味に熱中していた。「見せてよ」とノーラが近寄る。

「取るなよ」「お前こそ部屋を決める前に取るんじゃないよ」

「結構な業物だろ」短刀を手渡しシャットは言う。

「はっはっは、安もんだろ!」「まるで風を掴んでるように振れるんだ、相当使えるぜ。そんな闘技場で見せび
らかすための派手物でないほうがオレの仕事にゃ都合がいいよ」

「は〜〜生意気なんだ。メルバだってね、慎重さがちゃんとあるから真面目に強いんだぞ」

「じゃあこいつはやっぱりいいもんだな」「んなわけないだろ」

「きっと兵隊が泊まって置いてったんだ」少年は水兵の少女の手から短刀を取り返して自分の腰に納める。

「軍人が装備品を置いてくもんか! お大切なカスズの財産だぞ!」


 しばらくのち、「じゃあここに決めたぜ」

「にゃんだよ、もう決めちゃうのか。つまんないやつ!」

「もう出てこねえよ」少年の背後にはすべて開けられた調度品。

「じゃあ、隣の部屋にしなって。結局これっぽっちじゃ面白くない」少女の背後の机には銀貨、《ナイフ》、ベル
ト。

「これ以上いいもんが出てくるもんか。姉ちゃんこそこいつらが欲しくて言ってんだろ」「ぜんぜん!」

「丸腰で不安だったからありがたいぜ。ダルトはお土産、親が怖くなくなったよ」

「ふーん。お姉ちゃんの部屋ととっかえてよってあとで吠え面かくなよっ」