モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

10.手と手



「どこで手に入れた!? いや、返さなかったんだな!?」

「さあ、どやろか」

「貴様……」

「なぁにがきさまや。うち別におっさんのことまるっきり信用したわけやなかったんやで」メアリは頭巾から覗かせる視線を厳しいものに変えた。

「けどしゃあないわ。まるで死ににいくみたいな顔されたらな。だからきがえたったわけや」メアリはゾール教団の赤袖を両手で内からつまんで、ゴランに向ける視線は柔らかなものになった。

「……それは済まなかった。助けようとする子供を信用しない大人のほうがおかしかったな」

「おっ。いやいや、わかればええねん!」メアリはゴランに手を振ってみせる。

「これからの長旅が全部歩きになると言えば馬を放さなくなると思ったんでな」

「ああ!? いやいや、ははは、このあしが商売道具なメアリはんなめたらあかんで、ははは……」

 少女は片膝を上げて手でぽんと打つ。「とっと」彼女本来の黒い長衣から教団の赤い装束に変わって勝手が違うようであった。

「なあ〜〜あたらしい馬をこうたらええだけちゃうんか? 証拠はもうはしっていったやないか」メアリはもう見えない軍馬に向かって手をかざした。

「いいや、馬を買えば秣を与えなければならん。俺たちが野宿で我慢するのとわけが違うし、なにより街道を選んで走ることになる」「のじゅく……」

「追手どもだって荒野をゆくたった二人より、村々の貴重な厩舎に大金を払っていく二人を抑えようとするはずさ。お前だって奴らにいい目を見させたくないだろう?」

「んぬ……。ならええわ」メアリは手を差し出す。「うちがおっさん服こうてきたる。したら二人で仲良くあるこか」

「それも駄目だね。大金を払う子供のほうが怪しい。俺はこのままでお前についていく」ゴランは自らの白袖を内からつまむ。「片方がゾール教徒さまならなんとかごまかせるだろう」

 ゴランは歩き始めた。「行くぞ。今日は警戒して民家には近づかん。宿は日が暮れたら探そう。城下町の近郊ならまだモンスターは出まい」

「先にいくなや」メアリも歩こうとするが、頭巾の下の緑の瞳は怪訝なものに変わった。「馬がいったんは西やったから、ええと……」ゴランは北を目指しているではないか。

「ちょ、ちょ、ちょい待ち!」メアリは腿のあたりを両手でつまんで駆けてゴランの前に先回りすることに成功した。

「よく見えんが血相を変えてるな。そうだよ、お前みたいにいくさは怖がるもんだ。衛兵や魔女だってな」

「あほ!! ほんまにエサランバルを目指しとるんかい!!」

「森に突っ込むわけじゃない。まあ聞け、ガイデンハイムで耳にしたところによると森の北はオークが抑え、同行していたヒューマンの軍は西回りしてエサランバルを襲う構えのようだ。俺たちはどうすべきだと思う?」

「……東か?」

「そうだ。このまま北上して東海岸、いや、まだメルド河かな。そこをたどって港を探し、ブルガンディですごろくの上がりだ」

「うーん……。うぅーん……」メアリは頭巾の中で首をひねった。「いや、いやいやいや!! おかしいやろ、なんでわざわざ弓矢と槍のあだにはいらなあかんねん!!」

「北よりも東のベング街道のほうがへいわであんぜんにきまっとるやないかい!!」

「安全だから衛兵がうようよしているんだろうが」

「いいかげん策におぼれるのやめえや。いままでなんべん怪我しとんねん?」

「む……。互いに落ち着いたほうが良さそうだな。前に言ったかな、悪党は悪党同士助け合いが必要なんだ。俺はゴランという。よろしくな、相棒」

「なんやねん、やぶから棒に。なさけないもんやなぁ。うちはメアリや」

「知ってる」

 ゴランとメアリは互いの手を取った。