モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

6.現れたのは……



 ゴランは、ゾール教いにしえの高僧の故事を思い浮かべている。死者の復活。そして次に考えたのはゾール
と光の子の相克であった。

「いいえ、あいつをしっかりと消していかないとね!」(投げ矢なのか!?)蘇った標的に手を引かれながら、敵
の女は言う。涙の跡が乾かぬ頬は笑みに満ちた。

 赤い髪の女が片手に引き上げたのは長い矢であった。(素手で投げられるものじゃない)ゴランは常識の回
答しか生まない己がうとましい。

 ゴランは敵へと走るほかなかった。再度未知と絶望へ向かう以外の進路は閉ざされている。

「おい! 何をしているか!!」

 ガイデンハイムの衛兵は夜更けにあたりを怒鳴りつけた。「武器を下ろせ!!」

「邪魔」女は矢を振り下ろす。衛兵は素早く対応して槍を持ち直した。

 衛兵が飛んでくる矢ともみ合いになったようにゴランには見えた。そして形にならぬ声が上がった。液体の混
ぜられた声。

 ゴランは現れて倒れた兵の側に目をやってしまう。矢は衛兵の兜の喉の隙間を貫いていた。

(無造作に投げていたのに!)女が目標をちらと見たことしか分からない。ゴランは自分の足が止まっているこ
とに慄然とした。

 女の腕が引かれた。彼女は恋人へ舌打ちし赤い髪が揺れる。「痛いわね。あんたが見られたのが悪いん
でしょうよ。頭巾はどうしたの? かぶっていたじゃない!」

 それから女は灰色の瞳を恋人やゴランとは違う側に振り向ける。

「王城に跋扈する怪力乱神、見つけたり!!」

「坊主ども」女はうめくが素早く判断をくだし、なんと崖下に飛ぶのだった。

「くっ」そしてゴランは死体たちとともに取り残された。迫り来るは昼間見たゾール教徒たちである。

 彼らも判断を決めたようだ。「やはり都に仇なす朝敵であった。せめて我らの礎になれ」やはりかとゴランも思
った。

 先頭に立つ神官マンモンが下がっていく。ゴランが夜に見定めれば後方に僧たちの弓が一斉に引かれてい
た。

 ブルガンディからの旅人は決断を下す立場になかった。ただ女たちを追うだけだった。手段は残されていな
い。跳べば身体は足場をなくして崖から降っていく。矢の雨が彼を追った。

(早く地面に降りてくれ!!)夜空をつんざく矢音の群れが耳に入れられる。

 走る勢いで彼は肩から落ちていた。脚を折れば標的の追跡が叶わぬことになる。しかしこのまま失敗すれ
ば命を落とすだろう。選べる道は他になかった。