マーアムルとブルガンドは本日の仕事には遅れて就くことになった。雨が上がって、双子の月明かりはケフルの荒野を照らす。黄色く青い月光はひとつの人影に複雑な装飾を与える。 「クリールの人民、止まれ。陳情は二度と聞かぬ・訴えぬと取り決めただろう。鞘だからといって打ち据えられれば腕は砕けるぞ」右手を上げてショートソードの鞘をこれ見よがしに振るってやった。双子月の下で、ケフル軍の衛兵バックの影もまた複雑な動きを見せた。 バックの目の前にたたずむ田舎者から差し出されたものがあった。掌の中の小さな板切れに思わず首を伸ばせば、板に二つの図形を認めることができた。 そのどちらの存在から驚くべきかは分からなかった。ただ驚かされた。ケフルの旗印と、ブルグナの旗印。 そして目の前の者は頭巾を脱いだ。窮屈な思いをしていた豚の耳が解放されてぴんと立つ。 「よう。話は聞いているか? ははは」 ガルーフは静かな月光のもとに笑い声を上げてみせた。 「暑いな。もっと降っても構わなかったぜ、なあ」 ブルグナ軍からの使者のガルーフは軍服の袖までまくった。かえって闇が濃くなったとバックには見えたが、それはオークの硬い産毛であったらしい。 「まあ、雨が止んだから脱げたわけだけどな。暑くてたまらんな、こいつ」オークは外套と一体の毛皮の頭巾を叩いて雨水を振るっている。 「止めろ。本当に軍使なのか? 止まれ!」バックは目の前で外套を畳みはじめたオークに向かって声を上げていた。凶悪な猪のような顔面がごわごわ動いてしっかりした言語を発している。 「それと、ヒューマンがオークの腕を砕くのは無理だぜ。きっとな」 太いこぶのある両腕もまたバックの目の前で生きて動いている。 |
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