「ブルグナはなぜこのような無礼な輩を遣わしたのでしょうか」「指を差すなよ」レイランドとガルーフ。 「使者を相手方に持て余させること。わざと処置させてその後の展開を有利に運ぶ。初めにこれが思い浮かびました。オークは策にせよ明快なものを好みますから」 副官エ・ガルカはファンタール卿に向かいそっけなく言ったものだが、ガルーフであれさすがに意味するところは分かる。(オークとヒューマン、俺は両方から浮き上がっちまってる)そう思うと首に生えるオークの毛が逆立った。 「だが特使殿は王家という言葉を使った。本国の回答を待つ中に軍隊を動かせると思うかね?」ファンタールが何やら言い始め、残りの二人と共に何やら議論に取り掛かったらしい。ガルーフの耳に言葉は入りづらくなっていた。 命の危機を悟れば自分の意地の張りようもさすがに悔いる。しかし、 「よくもまあ人の目の前で、こいつは殺させるための人間だとか言えるもんだ。ヒューマンも割と馬鹿だな」 すかさず金属の音がして、ファンタールの前に首を伸ばしていたレイランドが振り返った。その白銀の兜が燭台の多数の光を吸い込んで照り輝いた。 「いや、貴様が一番の馬鹿だ。このオーク一人を打ち倒すだけで全てが台無しになる。だから自重しようとわざわざ互いに声を出しているのだ」言い終わり一呼吸おいてガルーフをじっくり睨んだ。「分からなければ死ね」 「よせ。卿の御前で」エ・ガルカはレイランドをたしなめなければならなかった。 |
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