モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

5.強靭なるオーク



「本来氷でもてなすところだが、なるべく箝口令で行こうということになってね」ファンタール卿は列席者全てに自ら酒を注いだ。

「卿。氷など存ぜぬ顔つきでしょうにわざわざ……」レイランドは主君に恐縮しつつオークに注意を払う。言いながら気付くことがある。

「ダグデルにたっぷりあるじゃないか。信じられないくらいいい場所だ」ガルーフはかの砦といえばまず暗闇を思い出す。

「自分で見たような感じだな。やたらに冒険心が強いと見える」エ・ガルカが横から言った。ガルーフは振り返って、「ほとんどなりゆきさ」

「喜んでくれるなら誠に結構。君だけでなくブルグナ国の変化はこちらも楽しみにしているよ」「悪いような気持ちになったらおしまいだなぁ。割と素直な馬鹿が多い」


「特使殿は好き嫌いはあるかな」正面の白髪の老人のファンタール卿はオークの使者のガルーフに聞いた。全員が着席し終わって、向かって右にケフルの副官のエ・ガルカ、左には白銀の騎士のレイランドがいる。

「いいや。ダグデルに置かれた食材と同じ物を使ってるんなら」真夜中に用意された食卓には艶やかな料理の皿が狭しと並べられている。「オークはなんでも食うぜ。ヒューマンと好物が同じなんて思ってもみなかったが」

「だからこそヒューマンとオークは競争していたのだよ。分かるかね」ファンタールは静かに言う。

「なるほど。そんな場合もあるな」「即答で分かるのか、ガルーフ殿は」エ・ガルカはオークを眺めた。

「モンスターとやり合うのとは違うな、と思ったわけさ」そして自分が故郷で狩りを営んでいたことを明かした。自警団を兼ねたものだ。モンスターとは互いの命が狙いものとなるが、ヒューマンはまさに競争の相手ではないのか?

「ほう。頭が働いたな」レイランドはガルーフにカカリコ酒の瓶を傾けてやった。「戦いから生き残びたら知恵もまた生まれる。どんな相手でも倒せるのか?」

 ガルーフはすぐ杯を口に運んでみせて、「うん、そうだな。ヒューマンが三人くらいなら相手できるかもな」

「何」反応役を務めたのは左のレイランドであった。武器の鳴る音がしたのは左右両方である。「各々よしたまえ」正面からはたしなめる声。

「悪かったよ。つい目の前の姿で例えてしまった。まだ酒のせいにもできない」

 レイランドは鯉口を収めてから、「やはり頭は回らないか。オークが三人に勝てたら計算が合わないと思え。ケフルがオークに滅ぼされたことなぞただの一度もない。ただの多勢が無勢の奴らだ」

「誓いを破らせるなよ」ガルーフは怒りを発するところである。

「怒らず考えたらどうなるかね。どうか落ち着きたまえ」ファンタールに言われて、ガルーフも気にかかるところがなくもない。