モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

6.黒と白と、光



「黒の魔術士。モンドールの奴、当てつけみたいなことをして」ウルフはパイプを噛んだ。

「ええ。当てつけとは努力を要するものよね。確かにそうよ、ウルフ」姉に言われるとウルフは少し頭を下げた。その黒く長い髪も揺れた。「姉上にはいつまでもご苦労をかけます。私が至らないばかりに。ひとえに監督不行き届きです」

「わたしは別に気に病んだりしないから大丈夫よ、ウルフ。弟たちは学生や部下ではないもの」ウルフは更に恐縮した。

「わたしは単なる落ちこぼれ。二人は立派な学位を授かったじゃない」

「姉上は機会に恵まれなかっただけ。実力はバレル随一です。姉上の前に立てばディオシェリルだって渋い顔をするのが精一杯でしょう」

「学生をよく見る良い教授さんがまたおかしなことを言うわ」カグヤの瞳が細まる。「でもディオシェリル、素直でないところが可愛いらしいわよね」

「そろそろ部屋で話しませんか。玄関の儀式などどうでもいいのです。カール茶を煎れますよ」


 カグヤは白の魔術士の儀式を目の当たりにしている。現在、円卓に向かって二人の魔術士が着座している。がりがりと小気味のよい、知的な響きが先程から続いている。ウルフが鞄から取り出した羽根ペンを素早く走らせていた。

「やけにこだわるのね。姉さん、失礼していてごめんなさいね」湯呑みを口に運ぶ。無味こそが快感である。カグヤはアラッテ山の雪解け水を口にしている。

「申し訳ありません。もう書き上がるのですが」食卓に精密な魔法陣が完成しつつあった。面積は思いのほか大きい。

「大げさねえ。インプくんが可哀想よ。現世に召喚されて初の命令がお茶を煎れろ、だったらどんな気持ちかしら」

「ただ難度の低さを見てもらいたかったのですがねえ。これが研究の途中の形」ウルフは右手のペンを小器用に回転させてみせた。

「儀式がペン一本と魔力で済むのはまさに革新ね。魔法陣の作製も完璧だったわ、ウルフ」

「姉上を水でくつろがせるどころか、お茶を何杯も煎れてくれるのではないかと冷や冷やしましたがね……」びっしりと卓に記されていた文字や図形は既に跡形もなかった。

「興味深かったわよ」カグヤは緊張を解いた弟へ水を勧めた。ウルフは苦い顔で受け取る。

 カグヤは生白く美しい手で羽根ペンを受け取った。弟たちの成果をよく眺める。「こう書くことで魔力を貯蔵していくというわけね。あなた方をまさしく尊敬するわ。ついでに身びいきするけれどね、ガンダの位、手が届くのではない?」

「残念ながら弟たちは無理です。ガンダは光の魔術士のものでしょう」