モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

3.魔法使い



 それからカグヤは裾を直し、結髪も調えた。座した姿は折り目正しい。自分の黒い髪と姉の美しいそれが同じだという言葉。ウルフはそれを思い出した。すぐに「違うったら」と返したものだ。その目の前にいた灰色の髪の弟の表情。近年にはない気持ちだった。

「妙なお顔ね」「ああ、いえ。とにかくおやめください。お体に障ります」

 取り繕ったが、あの日のような拗ねた顔をしていたかもしれないとウルフは思った。

「とにかく止めていただきたい。玄関は寒い。座布団も敷かないなんて」

「白の魔術士様もそうなさっていたではありませんか」

「よしてくださいよ、姉上」ウルフは手こずって苦笑した。

 カグヤも笑い返して、「じゃあ、《ヒート》と《シールド》を応用したらいいかしら」言葉はそのまま奇妙な発音に続いてゆく。

「あと何十回止めたらいいですか? からかいなさる。姉上が魔力を消費したら元も子もありません」ウルフが代わって熱気および盾の呪文を唱え始めた。そして頭の片隅に、家の外の人間にわざと察知されようとの計算がある。

「ウルフ、珍しいのね」「申し訳ありません。……おかしいな、まったく!」バレル魔法学院筆頭の白の魔術士は自分を叱咤したい。

 魔力的感覚をもってアラッテの周囲をくまなく走査していたのが唯一にして明確な原因だ。

「気分の転換と精神の集中よ、ウルフ」

 それらの欠如なのは分かっている。「顔から火の出る思いです」目の前には姉の優しい顔。自分のしていたこと、今しようとすること、家族のことを考えるほど今回の魔力は形を成さなくなる。

「魔術は奇妙だが便利な代物であるべきと痛感しています」

「そうね。我が弟も意外に未熟らしくて。もっとお守りをしてあげられたらね」姉はまた笑うが、心の影を隠せていない。

「もう一度だけ止めます。私は情けない弟ですが、学院の皆の協力で成し遂げられることはあるのです」ウルフはカグヤの手を取って熱く握りしめる。

「まあ。もしかして魔法体系改革の?」