「みな姉上に会えずに寂しがっていますよ。ことにボールガードの頭部がね」ウルフにしては珍しい種類の笑いを浮かべた。 カグヤは両の袖で口元を隠した。「まあ、まだお若いのに。魔力は十分なのだからお化粧なさったら良いのに」 ウルフは苦笑した。「彼は女性の真似事はしませんよ」 「わたしの友達の女の子も元気かしら? 光の魔術士マーブルに、闇の魔術士ディオシェリル」 「ディオシェリル……。いえ、彼女に真っ当な友人がいたとは存じませんでしたな。取り巻きやしもべ、モンスターに囲まれるのが大好きな輩だとばかり。二人に姉上を加えればバレル魔法学院の三人娘となりますね」 カグヤの生白い頬に紅がさすのは珍しい。「よして。ミスコンテストはとても恥ずかしかったわ」 「勝手ながら楽しみましたよ、こちらは」両頬に笑いを湛えながら、今この時もよい時間になりつつある、とウルフは思った。 「いえ、わたしは学位も取れなかったのだから。代わりにガーラを推薦するわ」 「ガーラね。あれは男をたぶらかしたいだけの悪女に過ぎません。化粧に魔力を通常の半分だけ使うという遊びをしているんですよ」 「嫌な言葉を使わないのよ、ウルフ。でも声はとても弾んでいること。遊びって何かしら」 「そうでしょうか」ウルフは煙管を吸った。ずっと失念していたから先端の火皿は灰でいっぱいだった。床の盆へ灰を捨てようとしたところで気づいて姉に詫びた。 「構わないわよ。ウルフと楽しくしていれば調子がいいもの。二人とも魔力が高まっているかもね」 「姉上はずっとお美しい。ディオシェリルやガーラの及ぶところではないですよ」 「照れくさいことをずっと平気で言うのね。あなたたちは本当に未熟で困るわ。白の魔術士ウルフに、黒の魔術士モンドール」姉カグヤはにっこりと笑う。 |
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