「あんたの身体はそんなことで神に変わったと言いたいわけ? 拝みたくなるものに見えないわね」 「はい、わたくしも聞かされました。『不足』『不完全』と」その言にディオシェリルは煙管をくわえた口の端からふ っと煙を吹く。 「うん、あんたはアンデッドのなりそこないよ。そうした術ならわたしたちも持っているから」 「こいつの足りなさではなく、溶岩の向こうの不足としたら?」灰色髪の青年は二人の視線を集めた。 「そう! わたくしもそう言いたかったのです! 神代と現代の遠き隔たりがわたくしを苦しみのある半端な肉 体のままにしているのです!」 「あんたたち、飛躍が過ぎるでしょう。ポンペートの底で起きたことだからと神々のせいにするわけ。今ってゾー ルの暗躍していた神聖皇帝の時代だったかしら」 「僕を坊主と一緒にするなよ。神に対し繰り言しかぬかさず魔術には無知な輩が、アンデッドの秘術にたどり 着いたことが面白いのさ」 「ドール、あなた正直ね。全て否定してしまえばわたしを止めることができるのに」 「失われた時代を求めるからこそです。好奇による不遜は偉大なるゾールがお許しくださいます」 「ドールなんて呼ぶな」モンドールは壁に背をもたせ、バクーダの言葉は無視された。 「わたくしの復活から話を続けてよろしいでしょうか? 身体の痛みが全て消え失せたことにその時気づいたわ たくしは眼を開けました。まぶたを再び開けられるとはまさか思いませんでした。そしてとにかくあらゆることを確 かめたくなりました。かくてわたくしは神の下僕たちを目にしました! まばゆい光を背にして、彼らは作業員の ような衣服をお召しになっていました……」 「なぁに、作業って! 神がどうのはもういいのよ。決めつけるのはおよしなさい」 「ええと……港の作業員のような雰囲気ですよ。まるでメルド港やブルガンディ島に根を詰めて働く人々のよ うでした。服の下に鎧兜をまとっていました! 背丈はハーフリングほどだったでしょうか?」 「天使が日々重労働に追われてひいひい言ってるの。それはそれは現実味があること。あなたどう思う、モン ドール」 「ともかくこいつは生きた……死んでいる証拠さ。貴様はどうやってこの世に帰ってきたというんだ?」 「命の価値を実感しているうちにわたくしは再び運ばれていきました。寝台がそのまま軽やかに滑り出していっ たのです。そしてまぶしい天井がのいていくと、星空です! 拙僧は星の下をくぐっていきました」 「なに? 星に驚いているのはつまり……」ディオシェリルは卓に頬杖をついて美しい顔を歪める。 「そう! ポンペート山には昼間登ったのです! ハーピーの餌になりたくなければ明るいうちに登山するのが 鉄則ですからな!」 「施術に時間がかかったんでしょう。あんたを生き返らせる手間が」 「言ったでしょう。全てを確かめたんです。見慣れぬ星座だと気づけてよかった。せっかく渡航したのにブルガン ディ大図書館に立ち寄れなかったことは残念至極でありましたが、さすがは我が国は神聖皇帝のお膝元。ト ロールの遺物に記された星座とわかりました!!」 「どうして立ち寄れなかったの」「気がつけば帰されていたからです! この都の大神殿に! これこそゾール 神のご意志である何よりの証拠と思いませんか!」「全部あんたの夢だったらよかったのに」 「北か? 貴様は北の地に転移させられていたと言いたいのか」モンドールが壁から背を浮かせた。 「おっしゃる通り。オークの文献も調べました。隣り合った種族で異なる解釈をされた星座があったのです。オ ークの都ブルグナから見ると大氷壁に隠されていた部分をトロールたちは見ることができたからです。わたくしの 記憶と計算でだいぶ正確な場所をこの中に記憶してあります」バクーダは自らの土気色の頭を指差す。「くれ ぐれもよろしくお願いいたします」 ディオシェリルは笑い声のような呻きを漏らした。 |
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