「わたくしは告白します……。最後の瞬間、『ああ全てはバランの罠だった。太古よりヒューマンに仇なす炎の 悪神がわたくしに手を伸ばしゾール様への信心の一角を崩すもくろみであったのだ』と多大なる後悔が我が頭 蓋を毒のように満たしていったことを」 「あんた、死んだの」とディオシェリルが唇から煙管を再び離して言った。 「はい……」バクーダは返答をしつつうやうやしい慨嘆に浸っているようだった。「まぶたのほんの先のすべてが 炎なのです。そして身体の隅々まで苦痛が覆えば……それを味わったのは一瞬の絶え間なさ……。わたくし は恐ろしさに泣いていたかもしれません。誰でも、例えば残虐なるご婦人でもそんな風に苦しんだことでしょ う。涙は流れる間もなく炎に吹き散らされていきました。わたくしの生涯の終わりは不本意に彩られました」 「貴様の思い込みで焼け死にに向かったことを自分のせいにされれば、どんな神も本意ではないだろうな。貴 様たちの職務は自らの責を押しつけることか?」魔女の紫煙たゆたう下でモンドールは言う。 「ははは……。では貴方の言うわたくしの動機や手段はどうでも良いとします。先ほど貴方のおっしゃったよう にわたくしの不死の口が嘘を送り続けているかもしれませんからね。目の前のわたくしという結果に目をお向け なさい。現実を信仰するのです。ははは……」バクーダはまた自分の顔の皮に笑顔を作らせた。それは二人 の魔術士に嘲笑う髑髏のような印象を与えた。 「嘘もなにも、あんたが説明できることはそれしかないんでしょう? 動機、手段、結果はもう聞いた。原因を お聞かせなさい。あんたは死んだのに生き返った。いきさつはこれ以上に面白いわけ?」ディオシェリルは煙管 の先で卓を叩く。逆さの雁首から灰がこぼれて卓の表面の木を少し焦がした。 「面白いという表現をしても結構ですよ。文字通りという他ない地獄の苦しみを授けられたわたくしにさらなる 苦痛が襲いかかろうとは。わたくしは高空に投げ出されていたのです――。我が全ての身を苛んでいた炎たち は上空へ飛びすさっていきました。苦痛を刻まれていく膚はわたくしに色々なことを教えてくれました。まぶたは 腫れ上がってもう何も知らせてくれませんでしたから。焼き尽くされても未だ感覚を残していることが恐怖の中 に驚きを生みましたが、わたくしはすぐに叩きつけられました。おそらく平らに仕上げられた硬い床だったのでしょ う。全身は当然ひしゃげました。どの器官がどこに位置するのかも判断がつかなくなりました」ディオシェリルは 鳩首のようになって聞き入る。モンドールは眉をしかめる。 「もう死んでいく気分はどうでもいい。なぜ溶岩流の底に宙空があった。説明してみろ」楽しい話を遮られた 魔女がつまらなそうな顔をした。 「神の奇跡は死すべき者たちに紐解けることではありますまい」 「貴様は大陸の全ての者を超えたと言ったはずだ」 「古来から幾度となく調査と盗掘が繰り返された場所だから、なにかが最近変わったのよね。推理はまあ置 いておきましょう。それよりあんたの味わった現実をもっと教えなさいな、バクーダ」傍らのモンドールは一人呟き はじめる。(なにかが新造されたのか。それとも転移か?) 「神の意図は計り知れませぬが、天使の救いの手は温かなものでした」「天使」バクーダの表情にディオシェリ ルは失笑する。 「正確な話はできませんがね。始めになにかの足音がありました。わたくしの腫れ上がった耳の穴にもそれは 届きました。次に囲まれるような風通しです。そして彼らは互いに話を始めました。わたくしは聞きました。『損 傷』『修復』とね」 「まるで死にかけの願望が作り出した幻ね」 「貴女にも願いはあるのでしょう? 全身に痛みが走りました。わたくしの身体は彼らに運ばれていきました」 |
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