モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

6.役立たず・聡い子



(あたしは役立たずだ)

 ティアラは自らの打撃力を計算から外す。ゴーレム−《ダガー》+商売がたき、エトセトラ。エドマンドは手負いながら素早い。彼はさっさと離れていくが、そこにティアラはかすかな望みを抱く。

 シャーズの顔に影がさした。(おっ)モンスターの拳が降ろうとしている。(近くて人数の多い方が怖いか!)

「下がんな!!」自分のさらに後ろを気づかって、シャーズは前へ駆ける。

「うにゃ〜〜ああ!」ゴーレムの致死の一撃から後ろの少女と自分を逃れさせるために、猫女は太い身体をひとしきり揺らした。

 影が彼女を覆いつくそうとする。「にゃっ!!」ティアラは死の闇をはねのけるため財産を手放した。標的を目に入れずに投げ上げる《ダガー》の技は成功したが、期待した手応えはなかった。(こんな至近でもだめか!)モンスターの拳が降る。ティアラの重い身体が跳ね上がるほどの衝撃。べングの国土が太鼓にされたみたいだ、と宙を舞うシャーズの商人は思った。

(今のは角砂糖くらいの希望)ティアラは気を取り直す。いつの間にかゴーレムの全身を見渡せるくらいの位置に自分がいたから。(あの子もうまく下がっているし、)

「おお!! やぁーっ」発見と高揚の混じった気合いを聞いた。(そうとも、裏から関節を突き崩しちゃえ)重い一撃を繰り出すための敵の巨体。味方の天秤棒は梃子みたいだ。(しかも、ゴーレムの強力な拳が地面から抜けないじゃないか!!)ティアラの心に飴玉くらいの気持ちが作られていく。

 シャーズとヒューマンの共通の敵は、中腰になって自らの巨大な拳の処遇に苦慮しているように見え、取るに足らないはずの小さな者の逼迫を簡単に許すのだった。ティアラの異種の味方が雄叫びを上げる。

(膝裏!! やった!)エドマンドの攻撃はティアラの期待に応えたが、

「うっが! つ!!」打ち手のほうが悲鳴をあげた。

 ヒューマンの声にならぬ泣き言を猫耳に入れられてティアラは苛立った。「こらぁ!! あんたの腕と得物なんかどーなったって構わないんだ!! 今度はね、思いっきりやんなよ! あたしはたっかい《ダガー》を捨てたんだ!」

 エドマンドは手のひらを立てて、ティアラに許しを乞うような仕草をやった。「ごほん!」その拍子に咳き込む。

(おや、ちょっとかわいそーかな)だが調子をつかんだヒューマンがしっかりとした一撃を食わせられたら、三人とも生き延びられるかもしれない。敵を倒せるとは思っていないが。(足があればじゅーぶん)

(しっかり裏取りさせなくっちゃ)自分の叱咤によってヒューマンに望みを托していることはモンスターにさえ分かるだろう。「く! こ!」(それまでやつの耳に入れるのはやめとくれ……)ヒューマンは身を必死にこごめて咳のようなものをしている。ゴーレムに見た目通り耳が存在していないことをティアラがセテトに祈りたくなったところで、

「か、かかってきなさい! わたくしが相手です! 誇りをかけて!」

「う!」「にゃ!?」二人の商人は色をなした。(あいつと、あたし以外の誰かが加勢してくれたら、確かに効果的だけど!!)少女はゴーレムの至近にやってきていて、《パチンコ》を勇ましく構えているではないか。

(まったく、聡い子だ!!)ティアラは異種族と息を合わせたことで、心にケーキ大の気持ちを作っていたことを恥じた。