「あっはっは!」猫の耳を持つ大きな女は吠えるように笑い、「ヒューマンはシャーズが服を脱いだら猫になると思ってるんだね!」 「シャ、シャーズは関係ねえだろう」エドマンドは顔をしかめる。 「小刀をおなかにつりさげてたのを見ましたの。一頭だけではありません」上等な服と品のよい言葉。少女は話を続ける。 「首にも細いくさりをみんないちように下げていました……。あれは軍の識票でございましょう」 「まあまあ、お嬢ちゃん。怪我してないかい」エドマンドは自分の両腿をはたいてみせる。少女は真似をして自らの服を叩いて痛みのないことを示した。にっこりと幼い笑みが赤い頬に湛えられた。「ですが、わたくし、羊飼いに目がいいとほめられたこともありますから。足もがんけんだと」 「ほいほい、わかった、わかった。じゃあね、お家でゆっくり話を聞こっか」ティアラはたっぷりとした両の頬を吊り上げた。「本当に一人で来たみたいだねぇ」手をかざす。猫人間は見渡しがよく荒涼としたべングの光景を眺め渡した。 「お、俺が送ってくから。シャーズは気をつけて帰れよ」エドマンドはティアラと女の子の間へ割って入る。 「気立てのいい子だ。だから、大の男と一緒じゃ気兼ねしちゃう。あたしは腕に覚えもあるよ」ティアラがケープをめくると、投げ短刀がずらりと用意されていたのをエドマンドは初めて知る。 「お……俺だっていろんな武器を持ってるからな」エドマンドは背中を揺すって背負い袋の大きさを示した。「見慣れないシャーズと一緒にいるほうが疲れちまうぜ」 「……」女の子はふたりを眺めながらたおやかな笑みを湛えていたが、口を閉じていた。二人の商人は女の子が静かになったのを気にして互いにむきになった。 「危ない!! ヒューマン!」突如ティアラは吠えた。 「下から! がけ崩れが!?」次に少女が色をなす。がけ崩れが異様にめくれ上がり、エドマンドの背後の地面が彼を打った形であった。 ヒューマンの商人は声にならぬ悲鳴をあげさせられ、これは内臓の空気を強引に吐き出された音かとティアラは思った。彼は思いきり転がって、崖から落ちなかったことが幸運と思えぬような衝突をした。 |
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