モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

2.二人の商人と



「だ、大丈夫かい!! 狼の群れに轢かれたんだろ!? 俺は、見てないけど」エドマンドは目の前の幼子から視線を横に振る。

「み、見たよ、この目で!」昼間のシャーズの瞳孔は細いが力がこもっているらしい。「狼がばーっ!とやって来たと思ったら、嬢ちゃんがごろごろーっとさ! とにかく、良かった、良かった、今日が悪い思い出にならなくて! やっぱりセテト様様だねっ!」ティアラは神を讃えた。

「狼に体当りされて生きてるなんか信じられねえなぁ。喋れるから、アンデッド化はしてない……よね?」ヒューマンの商人は同族の見知らぬ子供に膝をかがめた。

「ふ……ふ……」幼い子は口元に両手をやった。喋りだすと小さな手の端に頬の紅潮が見え隠れした。「いえ、じぶんがはずかしいのです。モンスターの群れにおどろいて逃げ出そうとしたら自分でころげてしまって、かれらはその上をゆきすぎていったのです。その、ばーっと」「はは!」とティアラが大げさに身体をゆすり、隣りのエドマンドは気分を害した。

「本当かい? どっか痛くないのかい」ティアラは女の子に寄り、服をはたいて埃を落とし始めた。

「ゾールの御加護さ。嬢ちゃんのなりが小さいのも良かったんだ」エドマンドも立ち上がって近寄る。

「それもふくめて恥ずかしいことです」女の子は笑って、「気品をもたねばならないのに、きょうは失態」

「ふうん。あたしはこのべべが良かったんだと思うねえ。あんたも分かるだろう、エドマンド」シャーズの女商人は服をさすり始めた。朱の毛並みを確かめるように何度も。エドマンドは答えない。

「ええ、わがべングの特産ですわ。金属のぶぶんは、ガルテーの産ですけれど」

「うん、分かっているよ。おれも仕事で行き来しているからね、この道。ドワーフにも会ったことがあるんだぜ。いつだったかな」エドマンドは幼い子に笑顔を見せてやった。

「ね、お家はどこだい。お姉さんが送ってやるよお」ティアラが女の子に向かって笑顔を見せればシャーズ特有の牙が覗く。

「あんたは忙しいと言ってたじゃないか。海の向こうで仕事があるみたいな言葉、ちゃんと聞いているぜ」

「ちゃんとと言う割にあいまいだねえ。シャーズが利に寄らず義によって動くのがそんなにおかしいかい! あんたこそ怪しいよっ」

「な、なんだ、話が飛びすぎじゃねえのか!」

「あ、あのう、もうしわけないのてすが」女の子は、剣幕な商人たちを見比べて、「この街道に詳しいかたにおききいたしますが、モンスターが道に出るなど、ありうるでしょうか?」言われてエドマンドはティアラから目線を外すことができた。

「いや、普通じゃないね」「片田舎なら有りうると思うけどねっ」ティアラの言葉が、その巨体のようにエドマンドに乗っかる。「ベングは小さな国だもん」そう言ってからティアラは小さな子をじっと見た。

「彼ら、コボルトではなかったでしょうか」その言葉はふたりを引っぱって捉えた。

「お腹に剣を隠して走っていたのが次々とみえたのです」