5.分け前
「馬は要らないと言ってるだろ。それより弓と大きな得物がほしい」
「機嫌よく引き受けたくせに何をしでかしたいのだ、この坊主」
「俺はしない。ヒューマンに暴れられたくないだけだ。なめられたらゾールの血祭りの祭壇に上げられちまう」
ガルーフの勉強はどうやら形になった。苦手な分野から解放されてそのままオークの幕下を出る。
追いかけるであろうガーグレンの声を聞きたくなくてガルーフは大股に歩いた。
素早く追ってきた者がいて、グロールであった。
「なんだ、お前か」
「あっしが手配を任されましたから」
「お偉い馬鹿将軍よりは気軽に話せるお前だな。おっと、お前の方は楽じゃないよな。部下の世話のついでに俺の面倒も見るんだろ」
「いくさよりは物をいじっている方が楽だし好きだし出世の少しの足しにだってなるんですよ。考えてみたらガルーフ様の手柄は変わっていますが飛び抜けたものかも。部将くらいになれたりして」ガルーフにはグロールの明るい声は冗談に聞こえる。
「発見者としてヒューマンの食糧の管理の権限を得られたのは嬉しいことです。ガルーフ様のおかげ様」
「俺が何かしたか」
「またまた」グロールは嬉しく手を振った。
「兄弟どもがこんなに大勢いると窮屈に感じてしょうがない。軍隊ってのに居ると全部がなりゆきで済んでしまう気がしてくるな」
「まぁお務めですから。とりあえず部下におかずを一品でも増やしてやれるのは確実に良かったです。威張れる」グロールは牙の見えない頬をゆるめた。
「分けるなら公平にやれよ」
「とんでもない。そこまでしたら他将から突っつかれます」
「どこが管理だ。中途半端だな」
「ガルーフ様にもおやつがあげられるってことです」グロールは笑う。
「窮屈だな」