モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

1.炎とオークの影



 平らな心で素直に受け止めるだけであった。自分は死んでいない。

 バランの側に呼ばれる。他愛ない夢のそのまたひとかけらさえガルーフは得ることができなかった。彼はなんとなく生き返って仕事に戻った。太くて強い両の足でベッドの脇に降りた。ヒューマンの用意した非常に柔らかな寝床と距離を置いた。 すかすかとした寝間着を振るって窓際に到達する。「おいおい、なんだこの明るさは」

「今日は曇りじゃがのぅ」貫禄ある声が返る。「ガルーフ、起きたのか。結局なにもなかったわけじゃ。ああ」ベッドのそばに椅子を持ってこさせていた老神官のゲーリングだった。大口を開けて朝の空気を取り込んでいる。年齢を重ねてやや貧相になった牙が見えた。

 一晩を患者の観察に割いた老人はいま安堵の心によってやたらと萎んで見えたが、ガルーフは話を聞きたかった。

「慌てぬなぁ、お主。城内で火が焚かれとると言うに」

「窓の外に赤赤と揺れる光。起きて一番に目に入って、誰がびっくりしないものかよ。神官様がそうやって安楽椅子でうたた寝しそうだからさ」

「ひねくれた信頼は嬉しく思うが、わしの方はひたすら謝りたいな」頭を下げてきた。ガルーフはゲーリングの手を取ってやった。「よっこいしょ!」ゲーリングは気合いを入れたが、立った後はもう一度あくびをした。

「俺はこう、足と手を次々動かしているだけでも嬉しい気分さ。恨みを呑んだアンデッドにはならなかったみたいだ。それだけで感動だね。だが心のほうは真っ暗闇だ。砦は浮かれた奴らで充満している。あの中の誰が責任を取ってくれるんだ?」

「いや、これからは何も起こるまい。しかし、オークの性根の情けなさをはっきり見せてしまったわけじゃ」

誰彼となくヒューマンの物資に手を付けはじめ、火を焚き肉を焼いて酒をくらい歌い踊る。ダグデルの砦においてバランの祭りが夜を徹して行なわれていた。ダグデルの壁に赤と黒の影が踊る。