「なあ、あれだよ」ガルーフは水平線を指すので、ゲーリングは目をすがめる。 「さすがにもう見えないかな。悪かった」 「なんじゃ、歳のこと言うとるのか。そんなことで宣教ができるか。モンスターをいち早く見つけて、いち早く隠れる。得意じゃぞ」 「わかるぜ。なら俺はオークいちの眼力を持っているんだ」 「減らず口を」「とにかく、ブルガンディなのかって聞いてるんだ」ガルーフは海の向こうのどこかを指した。 「ほんにどうしようもない……」「違うのか。ほら」ガルーフはもう一度腕を伸ばした。「ほら、あの一番遠くの島だぞ。大勢の死すべき者たちがどいつもこいつも仲良く暮らしているなら、島のきれっぱしくらい見えそうなもんだ。猫人間、見たかったなあ」 「仲良うではないわ。グロールのやつ、追い出されたそうではないか。働き盛りが哀れなやつ」 「そりゃ、いくさを起こせば追い出されるさ」 ガルーフは持つ旗を上から掴まれた。「オークが悪いとは言ってないぞ!?」 「声を潜めても遅いわ。意味もわからず旗を掲げとるだけなら、やらんでよい」馬上のゲーリングの腕力が旗を伝わってくる。 「やめろ、じいさん」馬とオークの力だ。かき回され続けてガルーフはよろけて叫ぶ。 「あ、待て。崖上だ。人がいる!!」 「人だって」グルルフが後を継いだ。「エ、エルフか」オークの騎士は鞍から遠眼鏡を探ろうとした。 |
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