モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

3.名前



 味方のほうが忌々しい有り様。隣の上官が勢いよく身をよじる度に若きグルルフの心はすくむ。ヒューマンの騎士が心変わりして斬りかかってきたほうが行動しやすかったろうと思うのだった。(なんなんだ、あの旗持ちの下郎!)

「なあ! あの銀ぴかの奴だよ! ヒューマンの大将さんよ!」威勢のよい声は列のすこし後ろから投げかけられてやまない。

「レイランドのことか?」軍服が固い布の音を立てるくらい大袈裟に振り向くガーグレン将軍と違い、ガルーフが目当てにしている人物は振り返らずに答えた。

「そうそう! 言われてみたら思い出せた。あんたはエ・ガルカだ。大将のじいさんがファンタール!」ガルーフは嬉しそうに一層まくし立てた。ガーグレンは更に振り返る、隣のグルルフは一言も発しない。

「彼はあの晩の宿直みたいなものだよ」ケフル軍総大将のファンタール卿は自分の白い髭をなでつつ振り返った。隣のエ・ガルカもガルーフに向かって顔を見せた。

「ヒューマンの名前は覚えづらいぜ。好き勝手につけているだろ。オークはグロール、ゲーリング、ジング、グルルフに……」(思いつくそばから喋るな!)今しがた上官の名前まで呼ばれた。グルルフは目も眩む思いだ。

「こちらからすれば、君たちの名前はジング氏を除いて似かよっている。失礼に聞こえたらご容赦願います」エ・ガルカはガルーフからガーグレンへと視線を移し、馬を操りつつ言った。

「詩人が珍しい名前だとよく分かったな。うらなりだからなあ、あいつ」ガルーフは腕組みを試みてブルグナの旗を大きく傾かせたので止めた。

「ブルグナの方々は子宝に恵まれているのだから名付け方も変わるのではないかな」ファンタール卿はエ・ガルカをうなずかせた。

「拙僧もそう思います。今のガルーフのように並べて呼ぶと響きが美しいでしょう? オークはみな同胞という意識が強いのです」ガルーフの隣で馬を歩ませるゲーリングは言った。

「なるほど、バランの神官殿。ヒューマンも深き愛を欲したいものです」エ・ガルカの言葉にファンタール卿は黙ってうなずく。

 グルルフはヒューマン諸国の地理を思い出した。(北はケフルやエルセア、中部はキルギル・ゾラリアの連合、南はベング、その他数々に分かれているんだったか)少しは気が落ち着く。