モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

6.オークの姫君



(ヴォラー)(ヴォラー)オークの歓声はケフルに轟く。(これじゃあモンスターも獲れないな)あまりのやかましさにオークの旗手ガルーフは久しぶりに狩人の気持ちに変わった。モンスターが近寄ってくるはずがない。

「ん? あれも感動しているのかな」ガルーフは騎士グルルフの馬の行く先を見つけて、隣の馬へ頬を寄せるようにした。

「国王陛下に奏上たてまつる文言をお考え中じゃな。大手柄間違いなし」馬の上のゲーリングは遠くに見えるガーグレン将軍に向かって神官らしからぬ笑顔をした。

「世界で一番えらい人にか」ガルーフは少しのあいだオークの大口を閉じた。「しかし、オークがなかなか勝てないのはどうしてだろうな。勝たせてくれない相手のほうが偉いんじゃないのか」ガルーフはヒューマンの騎士たちの姿を探したが、オークたちの熱気に満ちた混雑の中では時間を要した。彼らは山道のだいぶ先を進んでいた。彼らの祖国ケフルへの道だ。

「勝たせてくれぬのだから、偉くない。妊婦や嬰児の腹を空かせるやつらは善いやつらかね?」「ううむ?」ガルーフは頭をひねった。

「グラード陛下は臣民の腹具合をいつも気にかけておいでじゃよ」

「貴族というやつらは俺は好きじゃなくなったな。詩人の歌と本当のことは違っているもんだな」グルルフが雑兵たちを避けながらようやくガーグレンに近づくのが見えた。ガーグレンは蝿をはらうような手つきをしはじめた。彼の言葉選びは終わっていなかったらしい。

「お主、いい加減にせよ。大王はマルーグ姫様に対する親心があって、それと同じものを我らにも注いでくださる。これでどうじゃ」

 オークの王グラードは子宝に恵まれなかったが、この出兵に先んじて女児を授かった。吉兆よと帝都ブルグナはひとしきり舞い上がっていたのである。

「へえ。めでたいじゃないか」ガルーフは素直な表情に変わった。