モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

1.馬旅



(独りになるのは久しぶりだな)ガルーフは気がついた。振り返ればダグデルの城壁もちんまりと見えるだけになっていた。石の中に閉じ込められてたみたいだと思った。狭いところに並べられた兄弟たちの肩、北の王家、そして南の宿敵。周りの顔色をうかがう場所だった。

 次に空を見上げて、そこも重たい色の雲を精一杯抱えているように感じた。しかしウルフレンドの空の広さを目にするだけでも喜ばしくなる。

 気兼ねなく歌ってみるかと思ったが、眼前に聞こえた吐息でやめた。純白の長い首。ガーグレンとグロールに借り受けた軍馬である。

(翼がないのに《ペガサス》かよ)

(ペガサスが捕まえられていたら我が軍もちょっとは強かったですよ。でもこいつだって最高級品ですよ)

(名前負けしてるんだよ可哀想に、ははは。凄い顔で睨んでるみたいだな、こいつ)

(頭が良くていい馬でしょう)

 贅沢したときに荷馬の轡を引く経験くらいしかなかった。グロールには要らないと言い続けた。

 しかし、練習がてら南へ運ばれてみろとのガーグレンの命令があった。乗り方だけを教えこまれた。それからは馬に好きに歩ませろとも言われた。不承不承、ヒューマンの陣地へ運ばれていき、頃合いが良くなると落ちた。それを何度かやるうちに安全な姿勢を身体が覚えたらしい。賢い馬が全てやってくれるという感覚を掴んで楽しくなった。落馬の痛みも許せた。しかし素人の域を脱するはずはないので歩みはのろい。

 軍馬の逞しい鼻息に気を取られるのも良くなかった。

「独りになったらこいつらだ」

 接近を許していた。猛牛に見えるが頭と肩を覆う板鎧のような骨はモンスターの証だ。街道の切り立った崖から巧みに降りてくる。三匹固まって走る存在。

(ストーンカだな。大きいのが二匹、小さいのが一匹)