モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

4.再会を期す



 逃げ去った馬を追わねばならなかったが、ガルーフは少し走ってやめた。

 地面に血が滴っていない。それは半分の安心があって、もう半分は不安でできている。グロールから受け取った地図を開く。ダグデルからひたすら闊歩してきたのは太くて長い街道である。戦いで方角に混乱をきたしたけれど、馬の駆け去った向こうが目的地であると分かった。地形の絵図に間違いはなかった。(地図や食料が残っていて助かったぜ)初めは馬に触るのも避けていたから背嚢も自分で持ち運んでいたままだったのである。そして両手の武装のスピアとサーベル。戦いに邪魔な地図は急いで引っ込めておこう。

 ペガサスに置いてきぼりは食わないだろうと思った。軍馬のくせに戦闘の邪魔をしてくれた理由を考えて、(やはり軍馬だからだろうなぁ)と思ったからだ。

 勝手に逃げないようしつけられていて、こちらが「逃げろ」あるいは「逃げるぞ」と命令してやらなかったのが悪かったんじゃないか? 乗り手が戦場に置いていかれたらおしまいだ。

 それでもペガサスは尻尾を巻いてしまったからよほど驚いたのだろうが。

(落ち着けば本分を取り戻して四つの踵を返すだろ)ガルーフは安心の度合いを増やすことにした。道が間違っていなければ地面に血痕がないのはありがたいことである。ペガサスの当たりどころは良かったらしい。

 ガルーフは自らの踵を返す。地面に転がる一頭の猛牛はもう動くことはなくなった。ガルーフは解体用のナイフを取り出す。あるはずがない。オークの狩人は苦笑した。

 サーベルでなんとかするか? 仕留めたものに手をつけないのは心持ちが悪く思う。

 右手の中、戦いに使わず冷えた刃。ストーンカの若くて良さそうな弾力を持った肉に押し当てると暖かい膚の脈動を感じた。

「あ」

(こいつも当たりどころが良かったらしい)子牛は響く鼻息を発した。しかし目覚めて反撃を企てるほどの元気はない。

 ガルーフは大声で呼ばわった。ストーンカの家族に向かって叫んだ。そして自分は馬を追って駆け出した。再び鎧獣族三頭とやり合える元気はない。