赤い髪の魔女が自らの両手を打ち合わせて冒険者の二姉妹の注意を惹く。 「あっそうだ。お姉さん、急ぎの用事があるのよ。あんたたち箒に乗れるの? 乗れないわよね。じゃあね」手 を振って踵を返した。 「お待ちを! 我らは軽業も得意です」「そうそう。箒の後ろを貸してよ。こいつひとりは責任持つからさ」メナン ドーサは懐の妹の頬をくすぐって喜ばせた。 「重くて飛べないなんてことないでしょ? あんな細っこい箒で人が飛べるのがはなっからおかしいんだもの」 「なるほど」姉イフィーヌは妹の言にうなずく。 「都合のいいことばかり考えてんのね。どうしてもついてきたい子犬ちゃんが」二姉妹はディオシェリルを振り向 かせた。「私やモンドールが運動が得意だから乗っかれてると思ってんの。魔術士だから道理に合わないことを できるの。あんたたちには魔力をまるで感じない。まるっきり向いてないから帰んなさいって言ってんの。あんた たちは実力が足りないのに当たって砕ける職業なの? あと酔狂で箒に乗っかってるわけじゃなくて」ディオシェ リルの掲げた片手に箒が吸いつくようにやってきた。三姉妹は目を見張る。 「わかる? 矢みたいよね」メナンドーサが弓を背負っているのを見つけた魔女が話しかける。「前から後ろに 魔力を流しやすい形だから使うのよ。それと矢のように飛ばす発想も助けるから。こんな話わかる? わかん ないわよね」 「お待ちを! ではあの僧の方は?」イフィーヌが魔女の背を再び呼び止める。「うんうん! あれは普通のヒ ューマンだから馬に乗ってんだよね! でもなんか変だ!」箒に乗りかけていたディオシェリルは面倒そうに再び 叢を踏んだ。 「質問をお許しください! なぜあの方のお怪我は治さないのですか?」「あたしたちにしたみたいに綺麗さっ ぱり治せばいいのにね!」 「あー……あれは苦行僧よ。痛いのがいいんでしょう。あ、でもだからってあんたたちまで重荷になろうなんて 虫のいいことを考えたら駄目。彼が神罰を下すかもよ」 「お答えいただきありがとうございました! では一旦引き揚げますので、我ら三人、旅のご幸運を念じており ます! ほら、急ぐよ!」「えーっ!! どうして!? そ、そっちに戻るの!?」イフィーヌはメナンドーサとドロ ーネを率いて叢を明るいほうへ掻き分けていった。 (東? 東からやって来たのね)「一旦って……。さっさと引き揚げたほうがよさそう」 「しっかり追い返してくれたんだろうな」箒を手に歩いて戻るとモンドールとバクーダも地に立って待ち受けてい た。 「ええ。早く発ちましょう」ディオシェリルは手振りで僧を乗馬させる。 「嘘をつかないでほしいな。あの子たち、すっかり懐いているぞ」モンドールは夜明けを眩しそうに迷い飛ぶこう もりを解き放った。 「だから急ごうって言ってるの」魔女は箒を大気へ置くみたいに横に浮かべた。 「喧嘩をして傷だらけだった不良少女どもなど打ち捨てておけば良かったのです」 「うかつに馬で近づいたのは貴方でしょ。へったくそなんだから」三人は朝日から逃げるみたいに北西を目指し て叢の暗いほうへ進んでいく。 「私だってねえ、治したのは平和のためよ! 悪いことじゃない!」バクーダの馬は珍しく先を行き、魔女は言 葉を僧の背に投げつける。 |
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