「なっなに土下座してんの!? 一生お仕えする、って!?」 「私たち二人を蘇らせてもらったら、余生はこのお方のもんだろう」 「えー……」顔を伏せたままのイフィーヌの言葉に、メナンドーサとディオシェリルは異口同音にため息を漏ら す。 「古来より、騎士ハ己ヲ知ル者ノタメニ死スと言われるとか。我ら三姉妹は寄る辺なき身分でございますから いかようにもお使いいただけます。御三方は旅姿と勝手ながらお見受けした次第、ぜひ末席の三つをば汚す ことをお許しいただきたく……」 紫の髪の少女戦士が地面すれすれから届けてくる声をディオシェリルは耳の傍らに置いておく。戦士の口 上が続くなか、自分の片手の甲の爪の先を眺めはじめた。その彼女をさらに眺めていた灰色の髪の青年が 片手で箒にぶら下がりながら降りてくる。その姿にメナンドーサがたじろいだ。 「懐かれてどうする」「さっきも言ったでしょ。こんな野ざらしで誰が死んでいいの」 「ド……ドローネまでお仕えさせんの」「そうだ、突っ立ってるつもりなら抱いてやんな。窮屈そうだ」妹は姉の抱 えていた末妹を取り上げた。 「はぁ……あったかいな。ドローネが役に立つなんて」赤子に頬ずりし、郊外の闇に二人の姉妹の影が一つに なる。 「む? こっちが死にかけていたから気づかなかったけど、熱があるんじゃないだろうね。久しぶりに会ったから赤 ん坊の加減は忘れてしまったよ」 「ねえ! 病気も治してくれる!!」金髪の少女はドローネを抱いたまま叫ぶ。モンドールがつかつかやって来 て赤子を抱き上げた。「病気も治せる? 治せない?」少女のひっきりなしの問いを、乗馬したまま離れてい た僧が注目した。 「赤ん坊は体温が高いものさ。汗をかいているからおくるみをしっかり取り替えていけ。……ずいぶんいい生地 だが」 「お姉! 荷物は?」「待ってな」イフィーヌが草をかき分けはじめた。 「そうだと思った。でも貴方詳しいのね」「ルフィーアと同じさ」 「誰」「マープルの二番目の子供だが」 「ふーん、優等生さま、ふたりも産んでいたの」青年の灰色の眉がすぼまる。「君が取り上げたんじゃないか」 「ええ!! 嘘でしょ!!」ディオシェリルの驚きは夜の闇にまぎれていた鳥たちを怯えさせ宙返りを打たせた。 地上ではモンスターも逃げたかもしれない。 「ガーラとふたりで汗水たらしていただろう……」「なら大部分はガーラがやってくれたのよ。しーらないっと」 「苦労したのだから恩着せがましくするかと思っていたんだが……この子らに対してもだが、薄情な女だな、君 は」姉の探し物を手伝っていたのか、メナンドーサが叢から首を出してきょとんとしている。 「なに? 取り上げた赤ん坊は全員覚えてなきゃいけないっての?」 |
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