「てめえたちは偽善者だと、俺は言ってやったんだ」濃い酒は隠されていて手に入らなかったが、威張ってする 武勇伝は故郷の時よりもっと楽しく感じられた。囲んで話を聞いてくる同胞たちの分厚く丸い腹に温かみさえ 感じられた。 「嫌というほど見せられたよなぁ? あいつらは可哀想なほどへっこんだ腹をしている」平たく大きな鼻たちがう ん、うんと相づちを打つ。「それが驚くほど長く生きてるらしい。アンデッドじゃないのにだぜ」おお〜〜、と恐れ る声たちは陣の空気を震わした。 薄い酒をすすった。味がしたから旨いとガルーフは思った。「奴らは生きるのに飽きてると言った! だから、 攻めてきた俺たちに土地を分けてやるなどと言ったり、捕まえられた同胞をやすやす見捨てたりできるんだ!」 ジョッキを振り回す。中身をこぼさぬように。 「俺はエルフに本当の痛い目を教えてやりてえ! バラン様も喜んでくれるはずだからな!!」ぱちぱちとオー クたちが拍手をする。 「ふう。喋ったら腹が減ったなあ。酒はやっぱり腹の足しの逆になるからいけねえ。晩めしはまだかな。ヒューマン だのエルフだの、変な奴らと変なめしを食ってばかりいると心持ちまで変になっちまうぜ」同胞たちもそれぞれの 立派な腹を抱え始めていた。ガルーフの志に耳を傾けてもそれ以外は先立つものを欲しがる。 「まーたご無心っすか。あのね、酒盛りを始めたらエルフが襲ってくると言ったでしょーが。奴らの目の良さはわ かったでしょ〜〜が」食糧官の反対を受けた。 「酒はもう飲まねえよ。めしをもらいに来たんだ」旗持ちのガルーフは食糧官グロールに言う。 「はあ? おとなしく卓についていたらいいでしょ。本土のオークは酒で腹を温めようとしてかえって空かせるんだ から」 「違う違う、捕虜に持っていってやろうってんだよ。馬鹿にするんじゃないぜ」 「使者を務めてきたんでほだされたんすね?」 「なんだよ、俺の大声が聞こえてなかったのか。同胞に見捨てられて、いまの俺みたいに空きっ腹を抱えて死 んでいくエルフを可哀想だって思わねえのか、都会のオークは。バラン様だってお召しになるのは哀れな捕虜じ ゃない、立派な獲物だ」 「ふーむ。なら今度は見張りを努めてもらいましょうか。縛って繋いであるだけで誰も見てませんからね」 「なんだと!! 何を考えてんだ、うちの大将は」 「あと鍵をかけてあるくらいなんす。いくら言ったってガーグレン様は聞きゃしませんから手筈はなにかあるのでし ょうが、いくらなんでも気が気でなくて」 「俺だってそうとも。うちの大将ははずしてばっかりだからな」 「しかし何をにやけてるんすか」 「いやあ……同胞を取り返しに来るなんて許せねえって思っただけさ。あと俺はやっぱり馬鹿だなって」 「一缶持ってくことはないでしょ! あの痩せっぴいやあんたさんのお身体に入ると思ってんすか!」 「いくらでも食い物があると思いながら死ねたら幸せだろうが! ……重てえ!! み、みんなも誘っていくか ら、こいつで丁度いいんだよ!」汁と具のたっぷり入った鉄の缶の向こうでガルーフは叫んだ。 「騒ぎになったら手筈があっても無意味になるんじゃないですかね……知りませんよ。まあ大事がないのが一 番とあっしは考えときます」 「そうだろ? 牙のないてめえの顔も男前に見えるぜ」鉄の缶が喋る。 「あっしは美男ですよ! オークなのに優しいってヒューマンやシャーズ、ドワーフの物好き女たちがよく店に来 たもんすよ!」「情けねえ」巨大な缶はえっちらおっちらと横ばいに歩いていった。 (罠だというが、ただ誰も見張りをしたがらないのが本当のところじゃねえのか)「エルフはただの哀れな痩せっぴ いだってのにな」晩めしはエサランバルの空の下を征く。 |
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