「あの子たち諦めなかったようだぞ。飛び去るか?」モンドールは箒にまたがっていた。ディオシェリルは箒から下 りた。 「責任をもって早く追い払うんだな」青年魔術士は夜風に対し腕を組んでいたが、東のかたベング王国の空 はすでに白んでいた。 「冷たいわね。ちゃんと追い返してあげるわよ」 「同じじゃないか」 「違うわよ。これからいくさをやってるエサランバルに近寄ろうっていうんだから誠心誠意言い含めてちゃんと諦 めさせてあげようっての。私は優しいの」 「なら見ていてやる」モンドールはディオシェリルに同行した。バクーダは馬上から動かない。 金髪の少女まで平伏したのを見れば、ディオシェリルは(うえっ)と思う。 「我らイフィーヌ三姉妹、勝手ながらご内密の面談を所望いたします。平に、平にご容赦を」子供心に無礼 を働かぬよう努めて上げない紫の髪が赤い魔女をますます面倒な気分にさせた。 「じゃあ」とモンドールがあっさり引き下がり、ディオシェリルはひとり責をしょって三人の少女と相対した。 「まず初めに、我らのいきさつでお耳を汚したく存じます……」 「あー、そういうのやめて。やばそうな話のかけらはさっきからずっと漏れ聞こえてんのよ。関わりたくないから」 「ですが」「そう言われたらやめるっきゃないよ。お姉さん、頭がいいんだね。あたしたちの可哀想さもわかるでし ょ? 仲間に入れてよ、おねがーい」金の髪が平伏したまま軽い声を発する。 「うるさいなぁ」ディオシェリルとイフィーヌの言葉が重なった。 「し、失礼いたしました。失礼ついでに質問をしてよろしいでしょうか」イフィーヌ。 「こっちの話もあまり聞かないほうがいいけどね」 「じゃ聞くのやめよう」「うるさいね。……お差し支えなければ御三方のお立場を伺いたく存じます。馬上の僧 とは互いに一目置いているようにお見受けいたしますが」 「ああ、あれね。彼バクーダっていうのよ。知ってる?」 「知らなーい」メナンドーサが顔を上げた。抱えられているドローネが短い赤子の腕を伸ばした。自分から不意 に離れた姉のあごを追いかけるように。 「我らは都住まいではございませんから」「ふーん」 「じゃあ残りのお姉さんとお兄さんはなに? いい仲?」「こらっ」とイフィーヌは言うもののそれ以上妹を止めな かった。 「絶対違う」「ふーん」 「でも、モンドールはがっかりしているかもね。ほら、あっこに見えるのが彼の使い魔」魔女の指差すほうを姉妹 のうちふたりが振り向くとこうもりが飛んでいる。 「それほんと!? 怖いなぁ」「いつどこで何を聞いているかわかんないから気をつけなさい」 「同行をお認めいただき、ありがとうございます」「手強いわねぇ」 |
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