「かえして」メナンドーサは妹を引き取る。叢にまだ身を低めている姉のもとへ歩いていく。 「怪しげな黒魔導士に大事な妹をさらわれたみたいで怖くなったんでしょう」 「そうかな。そうなら渡りに舟だ。さあ行くぞ」ふたりの魔導士は夜風に言葉を乗せあった。 「なんだい、こそこそと。あの方たちに失礼な話をしようってのか」妹がそのまた下の妹を抱き背の高い叢の中 に身を隠すように座ったので、長女イフィーヌは四つん這いでにじり寄った。見つけた背負い袋を肩の一方にか けて。 「お姉に賛成してあげる。あの魔女さんたちについて行こう」 「ありゃ。一体全体どうして」 「あたしたち、行くところもないでしょ」 「そうだね。闇雲にドローネを勝ち取っただけだ」イフィーヌは手を伸ばす。闇の中で赤子の肌を探り当てる。 自分たちと同じく艶やな黒い頬の幼い末妹。 「家も取られてるかな」「当然さ。こすっからい奴らだからね。法と実際の両方しっかり取られてるだろう。大悪 党は私ら三姉妹のほうだ」 「ううう」「考えたら腹が立つだけだよ。考えなくていいさ」 「ふん、そうだね。あたしたちはもう足りないものだらけだ。だから魔法使いに出してもらおう」 「こすいね!! 私の話を聞いてなかったのか。あの方にふたりの……三人か……残りの人生をもらったんだ から、恩返しをしなきゃいけないってのに」 「先立つ物がなかったら立派な心だって動けないよ。他ならないあたしたちがさっきまで泥まみれでさ……。そ の中の山羊のお乳やおしめもすぐ尽きると思うよ」メナンドーサもドローネの頬をつついた。赤子は新しく差し 伸ばされた指を食事のように吸って、ひとつ上の姉はこそばゆさに紫の眼を細めた。 「……」妹に言われてみてイフィーヌは肩の荷の重さあるいは軽さを意識した。 「せっかくここまでやったのに三人野垂れ死になんてまっぴら。魔女さんを頼ろうよ。見ず知らずを生き返らせて くれるんだから、つっけんどんに見えて案外優しいと見たね。追い返したがってるから騙そうとしてるわけでもな い。ふふ、お姉が家で一番しっかりしてるって思ってたけど、一本気になったらだめだね。ねえ、ドローネもそう 思うよね」メナンドーサは末の妹に頬を寄せた。 「案外妹思いだったお姉ちゃんに免じて言う通りにしてやるよ」「げっ」 「全部洗いざらい話して、誠心誠意したいことを伝えるのが一番かもね。しょせん私らはただの子供だ」イフィ ーヌとメナンドーサの心は決まった。 |
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