モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

4.火遊びII



「だ、騙しやがったな、てめえ!!」

「言うにこと欠いててめぇ言いやがったにゃ! ……、ま……ま……まぁいい。あたいはやめとけって言ったろ
が。なにを騙したってんだよっ」

「じゃ……じゃ……じゃあ舟を止めろ。止めてくれよ!」小舟は波けたて二人の年若いシャーズを戦場へ連
れてゆく。

「やだ!」ノーラは言う。「あたいに取っちゃ千載一遇なんだよ、お客さん。第一まだまだ船をかっ飛ばさなきゃ
なんない。つまり食糧が足んなくなるかもしんないってことさ! あと船を止めたらお前、得意の泳ぎでどんだ
け行くつもりなんだ」聞く少年はただ身体をわなわな震わせた。

「ちきしょう……。ならどうして今まで黙ってやがったんだよ!」

「あたいがなに言ったってお前は乗っかってきたろうよ」ノーラは懐から木の実を取り出す。「このエリアルの実を
あたいが持ち逃げしたって思ってやがんだから。それこそ『騙すつもりだろ!」ってな。あたいはこいつをお前に引
き取らせて帰したかったが、おばちゃんのところから逃げ出したときた。したら乗せてやるっきゃないだろーが」

「そ、そんなこたぁ」

「まあ、どうあがいてもこう、あたいと地中海の端っこまで来るはめになったってことさ。これが運命とか天運って
やつだ! でもシャット、お前の選んだ道なんだから良しとしな」(不吉な予言をいうヒューマンのじいちゃんは
確かこんなこと喋ってたよな)少女は遥か東に置いてきたブルガンディの出来事を思い出す。

「元気出しなー! お前の作ってくれた飯を食ってやっから」夕闇に包まれながらノーラは言う。

「食わせたくねえ……」

「うるせぇ! あたいは食うぞ!」ノーラは釜を帆柱の金具にかける。船底で火は炊けないので、吊るした二
重釜に火種を入れて温めたり焼いたりするのだ。

「へへへ、炊き込みご飯だ」空きのあまりない釜に米飯と干物を一緒に放り込んだノーラ。次にシャットの引き
揚げた魚籠に飛びついた。いそいそと中を覗く。

「ありゃあ、にゃんだこりゃ?」シャットの刺身が入れられているであろう麻袋はわかったが、真ん中に邪魔なほ
ど大きくて氷たちを圧迫する四角い木編みの箱があった。

「思い出した、あたいが入れたんだ」「当たり前だろ」

「家のみんなが作ってくれたステーキ弁当だ! やったね!」「ゴブリンの料理かよ」「みんなの料理が食えね
えってのか。だいたい、ちらしを何日か前に食ったくせに」

「うっへ、だめになってんじゃないの」「ずっと氷で冷やしてたんだ、だいじょぶさ。あたいのやることなすことを考え
てみんなが作ってくれたもんだ」「ゴブリンは虫を喜んで食うんだろうけどな」

「それ以上言ってみな。船から下ろしてやるよ。お前の望み通りだ。……そろそろ炊けたかにゃ」

「臭いぜ。やりすぎだ」シャットは釜のほうを向いて顔をしかめた。吊るされた釜は煙を逃がすたくさんの穴から
白いものを吐き、暮れた空に自らの仕事ぶりを示している。

「ばっきゃろー、食べるもんが少ないんだ、味が濃いほうがいいんだよ」ノーラは煙の熱に気をつけて釜を下ろし
た。

「ごほん! くせえ!」

「言わんこっちゃねえ。オレの作った料理だ、ちゃんと食えよ」

「あ、あたいは料理を習う暇がないけどさ、みんながいいもん作ってくれるからね」