「そして国内の様子はいかがであった」 ランスロット卿は一礼してから、「モルダット王子・ガートルード姫・グスタフ公、いずれもお人柄にお変わりな いご様子でありました」 「ああ。青い城のことでございましたか」ピルリム卿がランスロットの後を追って来た。 「しようのない奴だな、モルダット。儀式の組まれる様子はないかね」 ガイデンハイム城は変わらぬか、とマクネイル大公は二度聞いたのである。食事の席を横にはずして、「… …しようのない奴だな」ともう一度述べた。 「先王ベイオール様の喪もとうに明けましたな。オークがいくさを起こして人心は更に不安定となりました」 「これは、よもや長い前振りではございませんか」ピルリムがまた話題に追いつこうとする。 「なにか見解があるのですか、ピルリム卿」 「話して見たまえ」 「王位の戴冠を遂げるのではなく……その」ピルリムは思い切ることにした。「七つの秘宝が既に手の内なの では」 室内の者はマクネイルの怒号を浴びた。 「死すべき者の全ての王から失われた聖秘石が、どうしてモルダットのような遊び人の元へ好んで集まる。ピ ルリムもあ奴の毒気に染まったか!」 「大叔父、若輩のピルリムをご容赦ください。そしてキルギルとゾラリアの棟梁としての偉容をお取り戻しくださ い」 マクネイルは自分の抑えきれぬ怒気に喘ぎをしばらく止められなかった。「うむ……失言であった。許され よ、両卿。今の言葉、すみやかに忘れたまわんことを」 ピルリムの動転は魂の消し飛ぶほどであったが、「わたくしの愚かな弁明をご容赦くださいませ。モルダット様 が最近アラッテの霊峰へ参拝を続けていると耳に入れたもので」 「どういうことかね」マクネイルはランスロットに顔を向けた。 「ガイデンハイムの城内のさがない噂話です。それがしが咀嚼もせずにピルリム卿のお耳に入れてしまいまし た。ピルリム卿は頭の中で話を進めすぎではありませぬか?」 「わたくしも、まさか秘宝が花冠のようにひとところに揃えられているとは考えておりませぬ。アラッテはしかし、有 史以前からの伝説ある地名です。モルダット殿下、最近活力にあふれているとか。それは英雄の気かも」 闇の存在が蠢いた時代があって、そこにウルフレンドの七神が集い来たりて一枚の岩もて闇の墓標となし、 それがアラッテ山と呼ばれたという。 「あ奴の根源が光か闇か、頼りになるこの大公に問おうとでも言うのかね。買いかぶられれば与太話であると 返そう。ゴーストを怖がるような子供は騎士の任を解いて寝床に着かせるぞ」 「ガイデンハイムに聞いた時から説が変わっておりますからな。ピルリム卿、長旅で気が転倒したのでしょう」 ピルリムは汗をかいた。 |
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