ナイフを入れるまでもなくて、フォークを突くだけで美味しそうな脂を吹いて肉はちぎれる。 お認めになるのですか、とマクネイル大公に聞けば返事はすんなり返る。 「ケフルがオークに優しくしてやりたかった。だからするのだろう? 簡単で、きれいで、子供が考えたような素晴 らしい発想だ」 「何百年もことを構えていた相手ですのにそのような言葉だけで物事が成るものでしょうか」少年騎士のピル リム卿が言う。彼は芳醇な肉を噛んでひたすらに旅の疲れを癒していた。 マクネイルはナフキンを使って牛の脂を拭い、「やらざるを得ないのだ。城の民はさわぎ森のエルフまで大きな 口を叩いてきた」 「北のシャーズも加わるかもしれませんな」ピルリムの隣りの席のランスロット卿が言う。 「ブルガンディやノルド河の損害を大袈裟にまくし立てるのであろうな」マクネイルはランスロットに同意して近習 の者に命じた。卿のグラスにレッドストーン酒が足される。 「しかし、あの野蛮なトンカツどもは攻め入ってきた恥知らずでしかないのです。おとなしくなるものですか。民 草がかえって脅かされます」 「トンカツかね? 牛肉より豚が良かったか。ピルリムは経済的な品にも詳しいのだな」 「い……いえ失礼。食い意地の話ではなくて」 「ピルリム卿においてはわしの仕留めたハンババで満足していただけたかな」 「なんと。我らの出かけている間に素早く狩りをなさったのですか。大公に輝いたゾールの導きに乾杯」ランスロ ットが杯をかかげる。マクネイルは手を振る。 「嬉しいが違う。そなたらを働かせてひとり遊興するはずがない。する者がおれば神聖皇帝の血筋から滑り落 ちるべきだ」 「戦火起こる前の狩果を存じ上げなかったこと共々、お詫び申し上げます」ランスロットは祝いの品を考えつつ ある。 「さすが大叔父は勇者であられます。過日の肉なれど頬の落ちるような味わい、ゾールの恵みというのはこの ような肉を指すのでしょう」 「それは調理の賜物だな。背肉は煮込み、付け合わせの肩の甲羅は燻蒸せしめた。そなたらの帰還に合わ せて命じた。丁度よく出来たようだ」 |
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