「それでさ!」甲高い声がエサランバルの大樹のうろにこだましている。「お弁当広げて、さあさ戦争の見物見物って、お気楽で残酷なロリちゃん像を勝手に想像して冤罪くれようとするんでしょ。んん?」とサーラをあごで差して返答は待たず、 「でもね、エルフのお弁当だろうともたないのよ。どっちの兵隊もお足は短いしお山の上に立つとじりじり煮られてるみたいな気分だしどうしたって傷んじゃうのね。神殿でユリンちゃんの祝福を与えもしたんだけど」 フェリオンを寝かしつけたと判断したナーダがやって来て、 「森を抜け出ては飢えるのが趣味みたいに見えちゃう。でもロリちゃん、他人にご迷惑をかけたらしゃれにならないわ。近くにヒューマンの集落があったのよね? それならわたしから借金してダルトを持ち歩いたほうがましだって考えたほうが」ロリエーンは聞き終わらずにまなじりを裂いた。 「ロリちゃんが何したと思ってんだ!フードでお耳を隠して活動してたからいざこざは起こしてないっての!」 「ああ……」とエルサイスが両の青い瞳を手で覆った。 「こっそりシーフ活動したからよかったよかった、ほっほっほとかロリちゃんそこまでは恥知らずじゃないの! エルシー以上に泣きたいよ!」周囲をくるくる向いて弁解に務める。「参謀に陥れられないうちに弁解しとくと狩りをやってたんだよ。お耳は隠しててもエルフの眼って便利なものなんだ。クリールのお肉たちは弓をよく知らないみたいだったし。その分お味は良くなかった。自分のべろを呪いながらなんとか平らげたのよロリちゃん」ぱこんと結局ロリエーンの頭は鳴らされた。 「命に敬意を払わないエルフは結局マイナス点よ。硫黄の山のそばでは餌が不十分なのでしょ。クルアフ山地は兵糧の備蓄もままならず弓兵の常駐もあたわずとサーラは見ました」 参謀に向き直られた大将エルサイスは、「そう思う。成し易かったならば件のヒューマンの教授の法則に従って暦を見て兵を置くようにすればいいから。しかし難易度が高ければ事故の可能性を考慮すべきかもしれないがどうかな?」今節の情勢は奇怪にすぎる、とエルサイスはひとり思う。 「ないでしょう」ナーダを真っ先に振り返えらせたフェリオンの声だった。「竈の煙は規則正しく上がり馬蹄の乱れも岩肌に伝わっては来ませんでした。オークのうかつな間牒が捕らえられたわけでもなし、ヒューマンの視力ではこのフェリオンは認められぬと自負します。ヒューマンの子らは自由に不自由な立場を選びましたよ」 「うん」エルサイスは礼を言って無類の斥候を再び休ませる。フェリオンは布団を肩にかけ座ったまま寝息を立てる。(横にしたら無粋かしらね)ナーダは静かに面白がった。フェリオンはエサランバルの動きを気取られぬために部下を退かせて一騎潜んでいたのだ。「勝手な方が多くて」とサーラ。 「まあーひとえにロリちゃんの愛の力よね」 |
|