モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

1.エルフの眼



 オークの行進を凝視するヒューマンであったが、更に常識を超えて彼らの陣を見る眼には気付かぬ。その稀なる眼力と聴く耳をもってすれば、斥候の任を全うするもたやすい。そしてエルフの中で早駆け一番のフェリオンである。クルアフの軍も知らぬ隠れ場から優雅に抜け出し麓まで夜を徹して走る。朝には遊ばせていた愛馬を見つけた。さっと跨がり街道を駆けさせた。動植物とよく心を通じるエルフは裸馬の背の上でまどろむこと自由のようだ。

 朝な夕なにエルフと馬は駆ける。日が空を回転するうちは互いを労り、そして夜には薪のそばに寄り添う。

 夢の中に遂にエサランバルの緑の匂いをかぎつけた。目覚めたフェリオンは背を正し格好を付けて森の砦に帰るのであった。


 フェリオンは馬から降り共に歩みはじめた。西部街道の過酷な日差しがウルフレンド南西に緑なすエサランバルに包まれると優しい木漏れ日と変ずる。ゆっくり歩むフェリオンの頭上の従者になった。

 ドワーフの性質とは逆に、自然の加工を好まぬエルフである。エサランバルの緑の天蓋と地面をしっかり支える太い幹たちは好ましいほどに生きている。近日あろう防衛戦の備えとして大軍を留めるような平地はなかった。

――優れるがゆえに気まま也。天に緑、地上にエルフ、地下には堆肥

――いつもなんとかなる。百年経てばなんとかなる

 気ままに散らばる兵たち。自分の馬にまぐさを与えて共に憩う。フェリオンも割り合い懐かしく思った。同胞も自分の存在を気にかけ、そばを過ぎようとすれば必ず顔を向けてフェリオンを視線でしばらく追尾した。

(昨今の大陸情勢は極めて異常、エルードの君の尽力も結局ヒューマンどもにはねつけられたと見える。幼いくせに頭の固い奴らは)

 フェリオンは会議の樹木を目指しその大いなるうろをくぐった。