モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

2.エルフの乙女ロリエーン



 かつての自らの言葉がロリエーンの心を捕らえていた。我が言を信じて長命を捨てるとばかりに旅立たれた勇者のフェリオンは再びこのエメラルドの門をくぐられた。細かな木枝を重ねて作られた会議の部屋に今や安らぎたもう。彼の手から受けし信書の表を目にするだけでロリエーンの頬は紅と染まる。その妖精のごとく愛らしい姿の動悸は鎮まらない。

 そして、「痛たぁーっ! 剣であたまぶっ叩くって不当懲罰じゃない!?」痛みに涙がにじんでロリエーンは振り返った。

「頭は真っ二つになっていないから大丈夫じゃないかしら? 鞘に入れたまま殴っただけだから。斥候の報告書を大将から横取りするような真似、懲罰以上のことが許されるけどね」恐怖にぶるぶるっと体をよじらせたロリエーンに興味はない。サーラは書状に目を通ししばらく黙った。

「サーラ、僕にも見せてもらっていいかな」

この度の北方守備の総大将を務めるエルサイスの言葉である。聞いたロリエーンが高い声を出して参謀のサーラをつついた。

「ロリちゃんのこと両断したサーラが巻き物独り占めしたぞ!」

「あんたは平気で書状を書き換えるでしょう。ヒューマンの軍団の動きによってあんたの罪のお沙汰が再燃するんですから慎重に生きてみなさい。エルサイス…大将をよく騙しては好きだってはしゃぐんだからわけの分かんない無礼者よ、ロリエーン」参謀の深き知恵を美しいまつ毛に湛えた瞳がエサランバル一ひねくれたエルフに鋭さを見せる。

「いやぁ、エルシーって可愛いから人気あるんだってわかんないかなぁ。どう見たってそうよ。サーラ? あんた意外と馬鹿ってことでよろしい? ナーダにも賛成してもらおうね。んねぇ」そう促された弓隊長の乙女は休むフェリオンに軍の弁当を調理して出してやっていた。煎れたカール茶を何杯も注いでやり馬上の旅からの回復を助けていた。

「ええと、ごめんなさい、大事なお話?」

「そうよお。ビキニでフェリオンちゃん誘惑するのは禁止って話。ミニスカなら結構!」初めにナーダを指差して自分の足周りを指すロリエーンである。ナーダの傍らのフェリオンは舌鼓を打ちつつ肩をすくめる。

「ナーダの方を向いたらサーラはマシだって分かった。許したげる。ああ、優しい優しいナーダだからこんな冗談も言えるのよ。うひゃ」ナーダはロリエーンに返す言葉に困って花冠と混ぜた美しい髪を梳いてみた。

 一連のやり取りを聞きもしなかったふうのサーラは書状をエルサイスに奉った。

「改遡なき上ロリエーンの意見正しいかと」

 エルサイスはサーラの意見を容れた。

「じゃお小言の必要なかったじゃん!」ロリエーンは眉と鼻に怒気を寄せた。