「つまり、こないだロリちゃんが出て行ったのはヒューマンとオークの行軍速度の検分のためだったのかい」 「んんんご明察よぉ。すごい!さすが大将! そして反省するロリちゃん!」体をよじらせてエルサイスに言いながら土焼の菓子入れを手繰り寄せるロリエーン。ナーダがフェリオンをねぎらって中身が溢れていた。「まずい。やっぱエサランバル風というのは薄いって意味だね」言いつつも野菜の粉を練った焼き菓子をぱりぱり口に運ぶ。「あっ反省するのもまずいことか。軍人としての行いだったもんねロリちゃん。参謀殿?」 サーラに問うと一直線の鋭い眼光が返ってきた。「ひいぃ」エサランバルの不遜なロリエーンもさすがに怖気づいて《こないだ》十八年前に行われた戦争の記録に気を惹こうとした。 「ヒューマンばかりオイシイ思いをするいくさってどんなもんだろと勇んで観に行ったわけよ。……いや、世界の不均衡を知るためであります」 「良いようなら尻馬に乗ってひと稼ぎ、……それは完全に冗談として」 「クルアフはね、すっごい疲れた。ロリちゃんの可愛い可愛いおみ足はがさがさの山道にはもったいないっつうのよ。でもおんまを使える街道を行ったらヒューマンに因縁つけられそうで。ぴりぴりずんずん行き交うヒューマンの斥候。難民の格好に殺気を放つ行商人に挙句の果ては重武装の冒険者。ロリちゃんの腕をもってしてケフルの兵隊のやることはすぐ分かったのね。ブルグナからご苦労さんに歩いてきたオークを一気に弱めるための弓兵と矢の置き場よ。ヒューマン兵はあたしらよりお野暮なんだから事前に頭をひたすら絞っておくってわけだね。昔の偉い教授ちゃんの法則がひたすら役に立つはずだぁね」 「大陸全土の大事になってしまったのも道理かしら? 落ち着ければいいけどね」サーラが滋味あふれる暖かい茶を煎れはじめた。 「ごっつぁん」ロリエーンはまず椀の感触を楽しむ。 |
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