モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

4.外出



「色々持っているのは色々使える、と考えていいんだな」

「そりゃあね! 冒険者のクエストって色々あんのよ! 吹き矢さ、使おうって決めたら、なんだか楽な気持ちになってこない?」言う通り気楽にアンジェリカはゴランに尋ねてきた。

「なぜだ」

「楽に終わりそうな気になるから」

「ふむ、分からんでもない。標的が少数の時に使ってるだろ? すなわち一方的に仕留めれば終わりになる仕事だ」

「そうそう! 大勢群れてたら意味がないわけよ。追われて大乱闘になっちまう。すぐ済むクエストなら残りは家族のんびりできるもんね。ああ、あんたって独り身だよね」

「俺は仕事をのんびり確実にやりたいんだ」

 宿の部屋に哄笑が響き渡る。「養うもんがいないと、暇でいいよね! 無理しなさんな!」アンジェリカは楽しそうだ。

「最近、女運が悪くってね。女難の域だな。人生最低かもしれん」

「へっ! ……そういや、さっきの話とも絡むけど、女の方はどうすんの。殺すなってお達しでしょ」

 ゴランが予想済みの話運びであったが、心に冷たい刃を入れられた気持ちはした。赤い髪の女。

「文字通りさ。標的は一人だ、こっちが逃げ去ってしまえばいいだけ。乱闘を演じる必要はない。絶対に心得ろよ」ゴランは長い魚箸をアンジェリカに向かって指すので女は顔をしかめる。

「俺たち二人が選ばれたのもそういうわけだろうな」「?」

「種ばれ済みだから言うが、俺はブルガンディに家がある。あんたはこの国の人間ということだが、南方の血が入ってるように見える。これは、目撃されてもどういう取り合わせか分からんということさ」

「ふーん。足がつきにくいってことか」アンジェリカが座ったまま窓を見やると緞帳の向こうに陽射しが暖色で湛えられていることが分かる。「まだまだだねぇ。どうしよ?」

 ゴランが席を立つ。「落ち着かないなら、外に行くか」

「えっ散歩? 仕事場じゃなくって? あんた、隠れていたかったんじゃないの」

「何も起きんようだからな。こっちだって何もやっていないのだが。あんたの実際の腕前を見たいね。お子さんより使えるんだろう?」

「そっか。郊外でモンスターを狩って、行って帰ってきたらちょうどいいか」

「ああ。できれば仕事に似た状況を見つけたい」

「時間がよく潰れそうだ。ほら」アンジェリカは右腕で輪を作るようにしてゴランを誘った。

「おい、なんだ」

「あんた言ったじゃない。でも、逃げる時に都合が良くっても普段一緒だと怪しまれそうだ。あたしが引っかけたことにしてやる」

「なるほど」二人は腕を組んだ。「あっさり手を取るんだねえ」


「あんた、怪しいよ」

「すまんね」ゴランは前へ向き直る。

「人混みに出るとすぐびくつくんだから。あ、もしかして、メアリちゃん」

「ああ。いや、実際に気配があるわけじゃない。必ず邪魔をされるんでな。怯えてるよ」

「は! もてると楽しいだろ」

「冗談じゃないぜ」二人は巨大な城壁の根本で、門を目指して歩く。ゴランは女の腕の感触に存在感を覚えている。