モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

4.解釈



「ああ……にんげんはなんで腹がすくんや。ゆうべがほんまに夢だったみたいやん」

「二人してゾール様の御許で修行でもしていろよ」ゴランは地面に向かって言った。

「やるわ、やるやる。する前に腹ごしらえしたい……」

「立てよ。そこらでゾール神官が見張ってるぜ」ゴランは地面でのびている少女に声をかける。

「このひとごみや。こうして伏せといたほうがあんぜんなんやで」

「そんなわけないだろ。いつも口答えばかりしっかりしやがって」白い頭巾と赤い長衣のメアリは手入れの行き届いた芝生に身体を投げ出している。

「僧衣が汚れちゃうよ。お坊さんをからかうとゾール様もお怒りになるから、そろそろおばさんと一緒に服を返しに行こうか。もう結構働いたし、ご褒美もいただけるだろ。ついてきてくれたら、そこらのお店でなんか一つ買ったげる」アンジェリカがメアリの手を取って起こす。同じ扮装の、大小のゾール信徒。「ほんま!? おおきにな!」

「しかしゾールはんがおこったところで、また光の子がやっつけてくれはるやろ」メアリは腕を伸ばして大きな書画を指し、身の丈に合わぬ袖をたぐって直した。

「こらこら」アンジェリカは苦笑いした。「だって、うちが貧乏してもいっこうにたすけてくれへんもん。けちな豊穣のかみさんや」

「まあ、この通りかもしれないね」アンジェリカは陽光の下、手をかざして再び神体を拝観した。「おかしな絵だ」争い合う神と英雄たち。

「豊穣神調伏図だな。ゾールはヒューマンの神、光の子は古代にウルフレンドを統一した神聖皇帝だからな。キルギル・ゾラリア連邦としてはどちらも正当化して祀りたいわけだ」傍らでゴランが言う。

「でも人間が神を倒すなんておっかないね」

「神でも悪ければ糺す、都合の悪い話でも記録する。我々は公明正大な国だと言うこともできるのさ。理由を付けるとすればこんなところだ」

「ふーん。まあどちらも勇壮に見えていいんじゃない」「それはオークのバラン信仰と似た見方だな」

「先生はなんでもご存知だね〜〜」

「いやぁ、受け売りさ。以前高い美術書を読んだのを、絵を目の前にしたら思い出した」

「わざわざなんでそんなものを買うのさ」

「仲間に好事家がいるのもそうだが、財産を物に変えておきたかったのさ。なかなか使う暇がないからな」

 ゴランはブルガンディの面々と税金を思うのがずいぶん久方振りに感じた。

「へぇ! そこまでいい仕事とは思わなかった!」アンジェリカは頭巾の下で目を丸くした。

「なんや嫌味な話になっとるな……。しんせいこうていはんも大儲けしたんやろな……。勇者がパーティをくんで毎日モンスターたいじやろ? 武具や財宝がみんなじぶんのもんになればなぁ」メアリのぼやきを耳にしてアンジェリカは笑い出す。

「ははは、ごめんねぇ。でも、冒険なんて要は年がら年中歩いてるだけだから儲かるもんじゃないよ。まさに足代が高くつくし、食糧の管理がたいへんだ。なんで人間はお腹がすくのって、あたしたちもよく考える」「ねぇ、パーティと言えばさ、この絵どれがダイヤモンドの騎士で、どれが光の魔術士なんだい?」アンジェリカはゴランに問うた。

「いや、この四人すべてが光の子さ。その二人は省かれているな」