モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

5.味方はどこだ



「見えるかよぉ」

「見えないわよ」ヤルムの命で村の子供がきょろきょろし出した。しかしアイラの良い眼にも認められない。「ケフルの鎧ってそんなに綺麗だったかしら」

「きらきら輝いて、かしゃかしゃ鳴って最高だろ」

「お鍋を体中に付けてるのね、痛い!」最高のものへの侮辱に対しておさげに制裁を加えるヤルムである。「堅そうって素直に言ったの!」アイラはむくれつつ崖の対岸を確認し続ける。木や岩や緑。眼を見開いているとそれらが混じり合って、見たいものがかえって見えなくなると感じる。

「なんだだらしない。ドラゴンだってやっぱり悪い目で見間違えたんだろ。ハーピーとかペガサスとかさぁ」ずっとからかわれていたこと、アイラは問答さえしたくなくなっていた。「…怒るなよぉ」

 でもちょっと口を動かした。「オマールが正しくドラゴンだって言ったのよ」

「じゃあいくさに怯えて尻尾を巻いたんだ、っと」彼女の前で口を抑えた。また独特の癇に触ってしまったかと。アイラはぷるぷるとかぶりを振って、

「だから凶暴なんてことなくて、賢いの」少し早口に言った。

「で、だ、凶暴なほうはいるのかよ」

 やはりアイラはドラゴンに思いを寄せれば明るくなれるようで一声笑うのだった。それから、「あたしいないと思うけどね? わざわざ鎧を着けるのってだいたいおかしなことよ。きらきらしてたらオークに分かるし、一方的にやっつけちゃえってのが頭のいいお考えなのでしょ」

「鎧を着けない騎士がいるかよ」

「鎧が無いと騎士じゃないのね」

「ん……規則ってわけじゃないか。光らなきゃ見えないよな」ヤルムはアイラに素直に謝る。

「いえ本当に居ないのよ。居たら照るお日様の影や草むらの動きがあたし気になってると思う」

「騎士様はもっともっともっと頭がいいんだ。アイラみたいなガキに分かるかよ」

「だってオークをやっつける大軍様じゃない。朝からしんとしてるなんて」

「女狩人のお見立てかよ、オマールみたいにわざと汚くして山歩きするのか。いやアイラがオマールの泥みたいなもんだな。時々ひっついて歩いてるだろ」

「あんたなんか1ヤルムに一生届かないわ!」

 会話をすぐ悪口に転がされて小さいアイラがとうとう癇癪を起こした。

「それはヤームだろ! 分かってるんだぞ!」

 自分の名に関して敏感な少年が怒声を返す遥か眼下にオークたちは進んでゆく。手に手に持つ弓矢にヒューマンの血を吸わせることを願って。