モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

2.アイラと大人たち



 アイラ――ゲオルグとマイラの娘――の目くばせにヤルムは気づいた。彼女は手の感触だけで乱れたおさげの体裁をなんとか整えようとしている。明らかに慌てているのでヤルムもまた振り向くとき勇気を絞ったが、幸いにかの父親は草上の車座の一員となっていた。

(あれはこいつの親であれはどいつの親だったっけ)ヤルムはアイラの他にひそひそ話を交わす友達の顔を検分した。

ふと見ると、(猟師のオマールまでいたんだ)村人とは言いがたいのに。大人たちは意見交換にひたすら没頭する様子であった。父オールガもいて好んで使う難しい言葉が更にややこしくなっていた。オークの行列はいま怖くないが後が厄介などという意味しか小さなヤルムには理解できなかった。


 アイラは父怖さに調髪のひと仕事をその指に命じていたが精神は別の物事に飛んでいた。今までの山の生活と幼いアイラの心ではひとかけらも理解できないことだけれど容赦のされないことが空の下のすべての世界に起こっているらしい。エルフという国の人たちとの戦争が始まったと聞いた。それに覆いかぶさって長い長いオークの季節までやってくる。それで村の心は以前から張りつめていたのだ。