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4.シャーズの船



 西国のヒューマンが相討てないでいるのとはわけが違う。ブルガンディ議会の激怒を招いた。「直ちにカスズから軽騎兵軍を進発させる」

 初めに東の陸軍を用いてちっぽけな反乱者どもをひづめにかけ西へ押し戻してゆく。のちに精鋭シャーズ海軍がノルド南岸のゴブリン集落を陸軍と歩調を合わせ圧迫掃討。最終的にノルド河に艦隊を結集しゴブリンの土地にシャーズの爪痕を深く残そう。

 総司令官にはカールたっぷりの金髪と黒の軍装で虎と謳われた勇猛果敢のシャルンホルスト提督。しかし就任式において「祝辞」なる場違いな手紙があった。「ガンバレオヤジ。カッタラサケノムゾ」幼年学校に優秀な成績で通う実娘のものであったらしい。


 ゴブリンの反乱は大陸北部に限らずブルガンディ島でも起こった。上級・下級と貴族の目的は相反するが固い口は共通であった。しかしそれよりも早かったのはシャーズ市民の聡い耳とお喋りな口の働きである。閉ざされゆく情報に怯えたことで不幸を強めたのである。個々の屋敷の番兵だけでは抑え切れずゴブリンが徒党を組むこともあった。ヒューマン、ドワーフ、ノーム等他種族が事件に巻き込まれることもあり、死すべき者たち互いの空気は尖ったものになってゆく。平等景気、平和景気、法則景気と賑わった海岸の市場どもの人影も次第にどこへか引っ込んでいった。

 それでもゴブリンはまだまだ非力で、被害の規模はけして大きいものではなかったのだが、ある日不明瞭にも戒厳令に準ずるものが発令された。「現在戦時下」も理由の一つに挙げられていたが、南港から怒濤の科学兵器と称される砲門装備の帆船たちが続々旅立った日は割と遠かったのだ。