かの法則は軍事学であったので議論の対象は軍、王帥、王権へとやすやす流れた。権力への熱いまなざしはこの際使いたい安価な潤滑油のようなもので抗議運動は拡大の一途、有象無象の衆が休みなく集う。運動において耳目最も集中するところであったクルアフ地方の国境近き小城たちは知覚過敏になった。原因と対策が早急に欲しい。多発する抗議集会の中、昼も夜も城下を練り歩く多量の松明の群れがどこかへわざと傾けられる前に。 敵の敵は味方。敵の味方は敵。古来からの言い様に飛びついてシャーズによるヒューマン弾圧とここに大発表を行った。 前を向いていれば自らの影は見えない。弾けつつあるクルアフの事態のこともブルガンディのシャーズ議会には多少の驚きで済む情報と知能を有していたが、影で育つことのない富を育て続けてきた者どものとある挑戦には気づかなかった。 ――猫が猫の砂を食らった 歴史の移り目を学ぶ際に注意すべき点は、上の者なら下の層を恐れず下の者であったなら上の層を侮らないことである。ヒューマンもシャーズもその上士も下士も浮き足立ちつつあった。 大陸の南西と中央、二つの地域が熱を帯びてゆく。しかし当の、遙かな西北・ブルグナの荒地に籠るオークたちには噂すら伝わらなかったのである。痩せた土地を手のマメもて鍬を入れ続ける。ウルフレンド最大の勇者たちは冷えた平穏を自分たちだけでずうっと味わうもの。 |
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