モンスターメーカー二次創作小説サイト:Magical Card

3.シャーズとゴブリン



 シャーズは商人を兼業する下級貴族の勢力が最も多い。シャーズのシーフは名こそ「盗賊」だが貴族の子飼いの私兵のようなものである。彼らの子弟も構成員に多い。その私兵が国軍を形成し雑多で新鮮な情報網をウルフレンド中に張り血管の血液がごとく情報をひっきりなしに循環させている。あらゆる売り手・買い手に様々な視点の多量な噂で対応すればシャーズ経済は定めて大陸一であろう。

 しかし自由に開け放つには危機に対して心得がなくてはならない。しかし議会の心は先に述べたように西のヒューマンを見ていたから、血液の流れをダンジョンの回り道のようにそっとすり替え続けても猫耳は動かなかった。犯行者たちはクルアフをはじめとしたヒューマン諸国へ息のかかった都合のいい工作員を増派し、逆にブルガンディ議会への血管はゆるゆる狭めてゆく。ヒューマン国は自らの領地の熱を冷ますのに様々物入りだったので議会の代理と偽って気前の良さを示すのも易いことであった。大陸南部の列強とされる国々の、親・シャーズ政策は継続してもらうがその相手はいずれ議会ではなくなる。陰謀が露見すれば大量の血が流れることであろうが、下級貴族たちは自分たちの新時代というものをこのような形にできると信じていた。


 さて、シャーズの莫大な富の源といえば北の植民地ノルドンのゴブリンの労働力である。しかし熱き法則派はここにも分け入った。長年の搾取により偏狭なたちに育った哀れな奴隷種族を刺激しないため、シャーズとヒューマンとの遊説家が多量な組を作ってかの地を訪ねた。シャーズのコネと賄賂をもって各地の密かな古代遺跡の奥に集会を開く。過度に平易な言葉を根気よく与えてゆく…。来る日も来る日も繰り返した後、遊説家たちが再会を果たし代表者の中のそのまた代表者の会議を再び時間とアルシャをかけ開いた。無学という教育を飼い主シャーズに植え付けられたゴブリンは激しい二派に分かれた。

 若者派――「断固独立すべし」

 長老派――「運命から逃れること畏れるべし」

 シャーズの説客たちはしもべの普段見ぬ姿に尾を逆立てて震え上がり、ヒューマンらは、もう十分ではなかろうかと互いに頷きあった。