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3.エルフの通信



「危ない。下がってと言っとるでしょう!」エルサイスはダムドの言葉に長い耳を貸さない。

 矢は歩を進めるエルフの大将の目の前で墜落し、矢じりは木の根の張りめぐった床に当たってぱちんと跳ねた。

 エルサイスは外套をたぐり身を屈めて矢文をひろった。「最新の署名を教えてください」ダムドは詰め寄った。

「時間がないのだから。お遊びじゃないか」エルサイスは困った笑顔でいなそうとする。

「大将がそんなでいらっしゃるから、私が代わりにとっちめて差し上げるのです」「ちゃんとエルサイスの前でおじぎをしたじゃない。見事よ。誰なのかしら」

「ナーダ」ダムドは弓隊長である妹に渋面をつくる。「すぐ敬語を使わなくなるどころか、指揮官に向かって矢を飛ばす。時間もないのに遊ぶ方がおかしいのです」大将のほうを向いた。

 大将エルサイスはひもといた手紙を指でなぞって数をかぞえた。小さな紙片に器用に文字が並べられている。運び手は多かったが、墨の調子はどれも黒々していると見えた。

「シャーロットだね」「ああ、シャーロットね。シャーロットですか」「女の子だからと手加減する兄さんじゃないのに、どうしたの」

「気になるのはロリエーンさ。『お兄ちゃん信じられない!』と笑顔で吹聴する人だから」ラスィが許婚に答えた。

「そう、ロリエーンにくらべれば誰かが我が義弟になるくらいはどうということはないね。突然流れ矢に中るようなものさ」

「まあまあ、みんな互いに冷やかして、普段通りで好ましいということにしとこう。ところで通信の中身の話をしてもいいかな」ダムドは矢も盾もなくうなずく。

 矢文には、東部に馬蹄の響きが認められなかった、というようなことが記されていた。