木々のアーチの向こうからダムドがやって来る。「大将、集合の矢を放ちました」「うん」 「大将、参謀サーラに代わりまして質問よろしいですか。エルサイス大将におかれましてはヒューマンとオークはどのような陣形でかかってくるとお考えで」「うん。竜騎兵隊長においては何か考えがあるのかい」 「はい。身も蓋もない言い方をしますと向こうの陣形などどうでもよいのです。長旅をしてやってきた奴らがエサランバルへ腰を下ろす前にやっつけてやるのが一番と考えます。我がドラゴンファイターの速度をご覧にいれましょう」 「でも兄さん、それは」長い耳を傾けていたナーダが口を挟む。「きゃ」背後からナーダの手を優しく握る者がいる。 「この弓隊長が敵同盟を釘付けにすれば我らの必勝は疑いなしというものですよ」「あ、ラスィ」ナーダは許婚の手を握り返す。「ナーダの射程はエルフの一等賞です」「でもね、ラスィ」 「援護する自信はあるか?」兄は聞く。「ええ……できると思うけれど」「『できます』とだけ大将に申し上げろ」 「いえ、兄さん、このいくさの前提がおかしいと言いたいの。いいえ、ヒューマンが十八年ごとにオークを食い物にしていたところからおかしいんだわ。それを指摘した人たちが押し潰されて、今は女王様のご意見が悪いことにされ軍隊が森へ差し向けられてる。みんな道に迷って外れているのよ」 「ああ、奴らは誤った。後戻りのきかない道さ。ヒューマンはオークを食い物で釣ったばかりに目的を遂げるまでやらなくてはならなくなった。オークは釣られたばかりに北の最果ての奴らの根城まで戻れるのか不安がっていることだろうさ」 「奴らが十八年ごとに恨みあってきた回数を数えられるものなら数えてみるがいい。こんな一朝一夕に奴らの間に絆や同盟が生まれるはずがない。だからまとめて追い払う好機なのです。奴らに時間を与えれば森を挟み撃ちにしようと分離しだすに違いありません」ダムドはエルサイスの方へ向き直った。 |
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