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8    20060301『空(SORA)』

『空(SORA)』

空(SORA)
 
 
稲妻が走り、雷鳴が轟いても、
灰色の凍てた氷雪が降り注いでも、
台風の泥雲が怒涛となり、豪雨に頬を殴られても、
それでも空は美しい。
 
小学生だったころ、
校庭の周りはクローバーの絨毯になっていて、
そこに寝転んで、よく空を見上げた。
からだの前に青い空、白い雲。背中には地球。
あたたかな春の日。
 
空をながめるのが好きだ。
 
外に出て、ただ真上に目をやるだけ。
そこに、人類の手が(いまのところあまり)汚していない
風と水の大自然が、ある。
 
空の上には、宇宙がある。
蒼天のかなたに星々があり、
その星々にも同じような天があり雲があり、
だれかがこちらをながめているのだろう。
その視線をさえぎって飛ぶ、ゴミのような粒。
 
無作法な偵察衛星くん、
ちょっと横にどいていただきたい。
 
何千年前も、何万年前も、(たぶん)空は、空だった。
太古の昔のニンゲンたちも、
ほぼ変わらぬ空をながめたのだろう。
そしてきっと、未来のニンゲンたちも、
ほぼ、こんな空をながめることだろう
……と信じたい。
この青と白のかなたには、
時を超えた過去と未来の世界。
 
朝ぼらけと夕映えが、にじみ出す光の変容。
乱舞する雲、眩しい太陽との、リズミカルな光の饗宴。
何万メートルもの深き蒼穹に、神々の筆が描き上げる、
うるわしき彩画。
そして一線に切り裂く、飛行機雲。
 
無作法なパイロットくん、
ちょっと遠慮してくれないか。
 
優しい空であれ、厳しい空であれ、
この清浄な天涯は、世界を包む。
昼ならば、青と白。
夜ならば、闇と金。
地球のどこでながめても、
空はひとつ。
 
人は空をながめる。
おだやかな青と白を、闇と金を、
幸せな顔で、はれやかに見上げるか、
重く冷たい暗雲や、照りつける無情の太陽を、
不幸に憂い、涙して見上げるか。
 
どこかで、だれかが、このときに、
この空を見上げている。
 
よろこびもかなしみも、ひとつのそらのもと。
 
 
 
更新日時:
2006/10/01

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Last updated: 2010/1/11

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