7
20060207『廃桟橋』 |

廃桟橋
船が着かなくなった桟橋は、
究極の、行き止まりだ。
哀愁漂う男の背中を思わせる
傾いた照明ポール。
行き場を失った人生が、
灯ることのないライトのもと、
ここに息づく。
キラキラ、ピカピカの、賑やかな場所を
見慣れる日々を送っていると、
こういうものに出会って、ほっとする。
役に立たない、けれど、なぜかまだ壊されずに、
そこにあるもの。
これもまた、世界のひとかけらだ。
この桟橋にはもう、未来への道はない。
しかし、懐かしい過去へ向かって、
船出することは、できるだろう。
夕闇せまり、湖面が朱の光に消えるとき、
この桟橋に背を向けて歩いてごらん。
昔日の、セピア色した船の汽笛が、
あなたを追いかけてくるよ。
|
|
|