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28    20080106『クレーン萌え(1)』

『クレーン萌え(1)』

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クレーン萌え(1)
 
 
 
なんとなく、萌えよクレーン。
 
鶴(クレイン)にちなむその名の如く
優雅に、ときに勇ましく空を指す鉄の嘴(くちばし)。
人が積み上げるバベルの塔の頂にあって
その嘴で雲を彫り、天上の神々の足裏をくすぐる。
 
都会のビルの谷間に
田舎の森の陰に
殺伐たる更地より身を起こし
きりりともたげる紅白の鎌首。
 
起重機という和名に恥じず
鉄を、石を天へと運び上げ
地球の重力に逆らって
文明を空へと起こし立てる力強さよ。
 
しかし、哀れなりクレーン。
いずれ工事が終わりなば
つややかな鉄と石の巨大遺蹟を残して
忽然と消え去る、その潔さ。
 
使命を完うし、ついに力を尽くし果たし
そのストラクチュアの頂より翼広げ
地べたを這いずる人類が気付かぬまま
ひとり天へ昇り、神に召されたのだろうか。
 
あるいは再び大地へと舞い降り
何処(いずこ)かの更地から、紅白の芽を出し
人類の果てなき欲望を担って
着々と神々の領域を目指すのか。
 
流れ流れて諸国の現場へ渡り鳥。
高名なビルを手懸けたベテランクレーンや
幸運なクレーンも不遇のクレーンもあり
それぞれの運命背負いて幾星霜。
 
常に天と地の境にあって
稲妻に撃たれ雨に濡れ
その弟妹とともに、あるいは夫婦となって
または一族を引き連れて、起てよクレーン。
 
たわーくれーんに、萌え。
 
 
 
更新日時:
2008/01/12

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Last updated: 2010/1/11

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