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14    20060912『グラマン(2)』

『グラマン(2)』

グラマン(2)
 
零戦の致命的な欠点を見切ったアメリカ軍が
零戦キラーたるべく即製量産しまくったのが、
彼女、グラマンF6Fヘルキャット。
 
とにかく頑丈、頑丈、頑丈。
操縦席の防弾はあたりまえ、
零戦の二倍のパワーを発揮する巨大エンジンと、
その直径に合わせて設計された、ブタフグな胴体、
見た目のエレガンスには目もくれず、
ケンカに勝てばそれでいいという傍若無人。
ひたすらパワーで零戦を蹴散らし、
六挺の機関銃から、雨あられの弾幕パンチで、
哀れ、零戦をバコバコに殴り潰す。
 
まさに太平洋の悪役。
凛々しく可憐な零戦をばりばり食ってしまった、
さだめし大食漢の鬼であろう。
 
この醜悪さ、カッコ悪さよ。
この図々しさ、憎たらしさよ。
 
しかし、ご覧のように、
斜め上から見下ろすと、
意外とスリムなこの機体。
隠れてこっそりダイエットした効果は、
けっして見かけだけじゃない。
翼を畳めば、これでも空母のエレベータを
ブーと言わさずに、ちゃんと乗れる機体なんだ。
 
よくよく見ると、けっこうスマート。
パイロットの人命を尊重した機体のタフネス。
実用にかなったシンプルさ。
零戦という強敵あってこそ生まれた、
論理的にして見事な回答。
 
憎たらしいけれど、
戦争に勝つための兵器としては、
やはり、傑作機なのです。
 
それでもグラマンなんて、大っ嫌いだという
頑固なお方がおられたら、こう訊きたい。
 
じゃあきみ、自分が戦争に出て、
空中で殺し合いをするとしたら、
ミツビシ・ゼロかグラマン・ヘルキャットか、
どっちに乗りたい?
 
 
更新日時:
2006/10/01

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Last updated: 2010/1/11

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