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      作品世界の補完
13    20051029●作品コメンタリー『プリンセスの義勇海賊』解説(2)
プリンセスの義勇海賊
SC0510-2
 
 
 
 
『プリンセスの義勇海賊』解説(2)
 
 
 
 
 
081●〈バッキンガム〉と〈ベルサイユ〉
田舎の港のさびれた遊覧船や漁船や艀(はしけ)とかに、あまりにも似つかわしくない壮大な名前がつけられていて驚くことがある。そんなノリでつけられた名前だろう。高速道路のインターチェンジ近くにときおり群れて建っている白亜のお城にも似たH系宿泊施設にこんな名前がついていると、なにやら哀愁すら誘うものである。
 
081●国際通商第6種免許企業
国家ではなく、超国家的な通商業界団体が、こういった星間運送業者を認証して、各種免許を与えている。おもに企業の技量面と過去の業績による信頼度を示す。“6種”はかなりレベルの高い看板であろうと察せられる。
 
082●(安物のコニャックを)レイティアも勧められたが……
レイティアはもちろん未成年ですが、王族なので法律の適用除外となります。ただしフリースラントの王室典範では、酒乱の王族に王位継承権を認めていませんし、それ以上に、安酒はお肌によくないため、レイティアは上品に断りました。
 
083● ランニング・シャツ
いまどきこれは“タンクトップ”と書くべきか筆者は迷ったけれど、やはりここはランニングとした。ジェームス・ディーンが上半身シャツ1枚で銀幕に登場したとき、それはタンクトップなどという洒落たものではなくて、ランニングだったのだ。オヤジ少年のラシル君は、見かけはダサいのである。ただし粗末なランニングとはいえ、きちんと自分でこまめに洗濯しているのですよ。
 
084●商人隠語(あきんどスラング)
銀河系の関西弁ともいうべきローカル商用言語。未来の銀河社会では、ただでさえ国籍不明化している日本語を原型として各国語をちゃんぽんにした“ピジン・ギャラクティッシュ”が喋られており、「モウカリマッカ」「ボチボチデンナ」などの慣用句が国際商用語として通用していたりします。
 
084●「リフト外せ」
サンダーバード第三話『ロケット太陽号の危機』で、打ち上げの瞬間、日本語版の管制員は「リフト・オフ!」を「リフト外せ!」と直訳して喋っていた。割と有名な話らしい。ふむ。当時は「離昇」なんて便利な言葉がなかったとはいえ、なかなかのセンスである。見れば、画面のロケットは、ちゃんとお尻から火を噴きながらも、先端はピアノ線に吊るされて上昇していくではないか。これこそ、60年代特撮を代表するシーンであろう。懸命に噴射しながらも、その上昇力は、実はピアノ線に頼るしかないところが、CGなき時代のよき風物詩であった。このピアノ線があからさまに見えても、あえて見て見ぬふりをするという節度あるマナーが観客に求められていたのであり、それこそが観客に、特撮芸術に対する寛容の心と、日本人として奥ゆかしい空想力を育んでいたのだと、筆者は断言したい。畳んだ扇子が箸となり、手ぬぐいが書物と認識される落語を愛でるかのように、観客たちはピアノ線を、そこにないものとして扱っていたのである。マニアックな些事にこだわらずに作品そのものを楽しむ、このおおらかさ、すばらしいではないか。“現実の欠点は空想の力で補えばいい”のだ。SFを愛する心とは、こういうことであろう。微に入り細をうがってCGに凝りまくり、そのディテールをいいの悪いのと云々する、重箱の隅をつつくような狭小な精神に、いつのまに私たちは毒されてしまったのだろう。そう、たとえそこいらのシャープペンシルが、ロケットでございますといって画面に出演しようと、それを強引にロケットに見せてしまう気迫と信念があれば、私たちの心にSFは成立するのだと、昔の人々は語っているのだ。
それはともかく、実際に本当に、ピアノ線に吊るされて上昇するロケットがあったっていいじゃないか。文字通りリフト方式で、エレベータのように昇る発射形態である。超巨大透明バルンガ(出典・ウルトラQ?)にぶら下げてもらえばいいのだ。もっともこの場合の「リフト外せ!」は、吊るしているピアノ線を外せという意味になるのだが……
 
085●「人命救助はお断りだよ」
ラシルはけっして冷たい人間ではない。人命救助が嫌いなわけではない。問題は、いざとなれば命がけで人命救助に赴くラシルたちへの、仕事の頼み方であろう。自分たちで努力もせずに「人命救助」を持ち出せば助けにきてくれる、それが当然であると、なめてかかる無責任な依頼者がいかに多いかということを、ラシルのセリフが物語っている。義勇海賊はラーメンの出前ではないのだ。サンダーバードみたいに電話一本で出動できるほどリッチでもない。仕事を持ちこまれたとき、それが本当に切実で切迫していることなのか、それをまずラシルは、曇りのない眼で見抜かなくてはならないのである。
他人の嘘を見抜き、本心を推し量ることが、まず義勇海賊のリーダーとして基本的に必要な力量なのだ。だからこそ、レイティアを試して本心を感じ取ったラシルは、黙って出航を決意したのである。しかしさすがにラシルも、それが今後延々と続く個人的な不幸の始まりになるとは、想像することもできなかった……
 
085●「……プリンセスですぞ……」
レイティアはフリースラント公国の王位第一継承権者。すなわち同国の王室典範では、女系の王位継承を認めていることになります。なお本文では、レイティアの両親すなわち現公王と公王妃について、ほとんど触れていません。説明するとまたまた蛇足を重ねてしまいますので。レイティアの雰囲気からすると、父王は政務に多忙すぎてノイローゼぎみ。母上は病弱でひきこもりがちといったところではないでしょうか。いずれにせよ、あまり面倒を見てもらっていないことは事実ですね。
 
085● 「ちょっと! あなた……」
レイティアはいちおう本物のプリンセスである。なのに突然、この、態度の悪さ、品の無さはどういうことかと、と不審に思う人もおられるだろう。レイティアは本来、上品なプリンセスである。しかし、一般のプリンセスと違うところは、祖母の遺品としてこっそりと伝わった義勇海賊の仮想劇ソフトを観まくって洗脳されてしまったという、幼児体験にある。レイティアの深層心理には“海賊的行動規範”が刷りこまれてしまったのだ。だから本人も意識しないうちに、プリンセスらしからぬ粗野な行動に走ってしまうのである。また、ヨハン・ベック学舎の惨劇で、殺戮される学生たちを目の当たりにしながらも、人事不省のパニックに陥らずに済んだのことも、そしてまた、その後のレイティアの、なにやら先走った、勇敢というより無謀な行動も、義勇海賊ラフィットの番組の影響なのである。幼少の頃、親とのスキンシップよりも先に冒険アクションTVゲームにハマリきってしまうと、成長してどうなるかという、ある種の見本でもあろう。
 
091●電子ペーパーカッター
お役所向けに紙の書類を大量に作らねばならないラシルにとって、必携の事務用品。しかしこれを怒れるレイティアの目の前にさらしたことが災いして、以後、レイティア姫の専用凶器として定番化してしまいました。
 
094●グルーナウ
透明クラゲ的空中浮遊群体生物。電磁波を吸収してしまうので、ステルス性が高く、レーダーにも引っ掛からない。そんな生物が地球の空のどこかにいてもいいと思う。
 
097●『萌える毛根・一斉開花』
グリュンワルド(緑の森)社の製品をゲルプクロイツ社がライセンス生産しているヘアケア製品。不毛の砂漠に緑をもたらすかの如き効果があるとされる。ラシル君はあくまでサービス精神でレイティアに差し出したのであるが、せっかくの親切心が仇となり、自らの髪の一部を失うに至った。それでも全然あわてないのが、さすがラシル君。なにぶん命がけのお仕事、髪の毛の少しくらいなくしても、生命に別状なければ、なんら、くよくよしないのである。
 
103●ほとんど男ばかりの……
唯一の常勤女性である船医エディットが医務室にいるので、歌っているのは常識的には男ばかりということになるが、中には個人情報として性別を明かしていない者もいると想像できるので、“ほとんど”男ばかりとなった。この中に両性者や中性者がいるかどうか、それは船医エディットだけが知る、業務上の秘密なのである。
 
104●社歌
ほかのお話に出てくる“アロンソ騎士団の歌”と同じであり、なにか歴史的な由来があるようです。また、ミュージカル『レ・ミゼラブル』で歌われる“民衆の歌”になんとなく似ているようで、歌って歌えないこともなさそうなところが、不思議ですね。
 
104●「睡眠薬を飲んで寝ろ」
都合36時間もトイレに行かず寝ることになる。これに限らず、作戦中の義勇海賊は途中でトイレに行きたくならないのか気になるところ。じつは作戦開始前から、かれらは食事を“K口糧(レーション)”という軍用ミールに切り替えている。これは、生活に必要な栄養分とカロリーを供給しながら、ほぼ完全に消化吸収されて、排泄物がなくなるという理想的な未来型食品である。が……問題は、やや湿った緑色の段ボール状という、その形状と味のまずさにあった。あまりにも不味くて、食べるとみな黙り込むので“サイレント・グリーン”などと称されるシロモノである。しかしさすがに民間企業の義勇海賊、このシロモノをなんとか美味く調理する方法を開発し、秘伝のノウハウとしているのだ。また、義勇海賊たちが下半身に履く下着には、高分子化学の粋を懲らしたバイオ吸収素材でできた股間コンポスト・パッドを装着している。体内から出た固形物も水分も吸収し、微生物で分解し、乾燥する素材だ。個人差はあるが三日あまり使用でき、使用後のパッドは堆肥として利用できる。
問題の場面は、裸のレイティアが、戦闘機で二万キロメートルもの上昇を行なったときである。スカーリアとの豪勢なディナーを食したあとで、一夜眠って、起きたとたんに走って逃げ、その後すぐに戦闘機を操縦して、命懸けの飛行を三〜四時間はしたことになる。姫様がめでたく〈シュルクーフ〉へご帰還になったとき、お心のうちはひたすら忍耐我慢の心境だったのか、それとも……。もちろん戦闘機のシートには、生理的非常時に備えた袋も常備してあるが、それ以上詮索すると、王室不敬罪で縛り首……かもね!
 
105●ヒッグスピアサー
本文での説明の通り、航宙船の進路前方に分布するヒッグス粒子を跳ねとばしてしまうことで、航宙船の質量増大を押さえる装置。これによって、質量/推力比を極端に減少することができ、亜光速へ向けての驚異的な増速と減速が可能になる。また同時にヒッグスピアサーは、前方の小型障害物に対する“撥ね除けスカート”としての役割もはたす。
ヒッグスピアサー……ヒッグス粒子をピアス、すなわち穴を開けるかのように撥ね除ける装置……は、拙著の『吹け、南の風1』(2001年12月発行)で登場し、説明している。その後、庄司卓先生の『エイティエリート』(角川スニーカー文庫)で同じアイデアの航宙船加速装置が使用されているが、私が庄司先生のアイデアを盗んだわけでもなく、その逆でもありませんので。念のため。ヒッグス粒子の存在を認める以上、これをなんらかの方法で排除しなくては、航宙船の光速近くへの加速は困難になるため、こうするしかないと思いますね。
 
125●チョコ万
チョコレート饅頭のことではない。今はどうか知らないが、四十年ほど前の日本では、商船は一万トンを超えると何かの税率がアップしたとかで、そのため、トン数一万トンにちょこっと足りない水産加工船なんかが量産されていた。それを“チョコ万”船と呼んだそうである。
 
127●〈ゼーアドラー〉、〈イルマ〉、フォン・エックマン、R・ダンカン
このあたりの名称は、L・トーマス著『海の鷲……ゼーアドラー号の冒険』と、ホイト著『エムデン号最後の航海』から採っています。なお、あとから出てくる〈ツェツイリイ〉は、レイナー著『眼下の敵』に間接的に登場したドイツ通商破壊船(おそらく商船活用の特設巡洋艦)の名前です。艦船ファンには説明不要ですね。
 
130●「×××」
具体的な内容はご想像にお任せ。この内容をレイティアは知っていてカマトトしたのか、それとも本当に知らないで訊ねているのかは、筆者にもわかりかねるところです。深く詮索すると、フリースラント王室から不敬罪の告発を受けることは間違いありません。この直後、首に縄をかけたケルゼンのCG写真つきで、「姫君が乗船中はシモネタ一切禁止」の社内通達が密かに回覧されました。なお、ケルゼンが特別Hなわけではなく、そもそも女性といえば、雄どもの裸なんか見慣れた船医だけという環境ですから、下衆なシモネタなんか、日常会話の一部分となっているのです。命懸けの仕事もするのですから、そんなことをいちいち気にしていられません。
 
131●「いけないかしら、お客さまだし」
普通、一人っきりで見知らぬ人々に頼って旅をすることになると、なにかと不安になりストレスがたまるものである。しかしレイティアはさほど寂しがることもなく、ひょいひょいとラシルについていく。そのことを図々しいとも思っていない。遠慮もしない。ここのところがじつに王族である。自分以外はみんな従者なのであり、それが日常なのだから、一人でも全然めげないし、平気で命令するのである。孤独であることは当然の宿命で、むしろ孤独を楽しみ、唯我独尊を通せるところがレイティアの人格的強みでもあろう。とはいえ彼女に結果的に振り回されるラシルにたまるストレスは、推して知るべしである。ひそかに専務室にサンドバッグをぶら下げて、へたくそなレイティアの似顔絵を描いて殴りまくり、ようやく憂さを晴らす日々が続いたことと思われる。
 
133●片栗粉を溶いた……
無重量環境が日常である航宙船内では、なにかとねばねばべとべとして飛び散りにくい、和風エスニックな食品が多用されている。船の厨房によっては、代々伝えられている秘伝のレシピもあるという。〈アントワネット〉の場合、船長の好みで、朝食にはたいてい、“納豆玉子かけ御飯”なるネバとベトの絶妙なハーモニーを追究した食の芸術が供されている。このほか、“よく混ぜた天津飯”“よく混ぜたハヤシライス”“よく混ぜた味噌汁御飯”といった“猫飯シリーズ”や、“おからと豆腐のマヨネーズ和え”などがある。
なお本文では触れていないが、この粘茶には、特製のみたらし団子が添えられていた。
 
134●独立商人
どこの国家にも属さずに、個人資格で民間船を運航する商人。正規の商船にかかる各種課税を免れているため一般に運賃は安くなり、正規船では引き受けてくれない危険な貨物も扱ってくれる。しかしその行動は犯罪すれすれであることが多く、さまざまなリスクを発生する。概して海賊行為は行なわないものの、事実上の密輸船である。
 
134●銀河の北半分
宇宙に北も南もないので、これは昔ながらの慣用句である。北半分、南半分、こっち半分、あっち半分などともいう。
 
140●「今はできないけど、きっと覚えま……」
美しき姫様がおっしゃると、いじらしく健気に聞こえ、「いいの、いいの、やんなくていいの」と反応される言葉。「やらずに済ませる」ための布石としても用いられる。ただし同じ言葉を男の新入社員なんかが言うと、「体で覚えろ」とブッ飛ばされる。
しかしいくら何でも、ソウジ・センタク・スイジの意味を知らないほど学のないプリンセスであるはずがない。咄嗟の機転で可愛げにカマトトしたんでしょうね、きっと。
 
141●CQD
この時代に使われている国際救難信号。Come Quick Danger(もしくは Distress)の頭文字と言われるが定説はない。またSOSも併用されるが、こちらもSave Our Souls(もしくはShip)の頭文字と言われるが、実際はそうではなく、モールス信号で発信したときの可聴性を優先してこの文字になったという。
余談だが、史上最初にSOSを発信したのはタイタニック号だという説があるが、それはガセだということである。(高島健著『タイタニックがわかる本』成山堂書店)
 
141●「海賊に××される」
海賊に接待されたり送迎されたり奉仕されたりするとは思えないので、××とは、その反対の暴行、誘拐、強姦に類する、危ない表現であろう。いかに緊急事態とはいえ、若い娘が口にするにはやや勇気と羞恥を伴う言葉であったと想像される。しかしその言葉を聞いた地表空港の管制官たちに「海賊たちに××されるくらいなら、ボクたちが××よりずっといいことをしてあげよう」と思わせる効果が十分にあった。
 
141●ブリッジ三人娘
マクロスに限らず“明るいブリッジ”の条件ですね。SF宇宙戦艦数々あれど、その艦橋の華やかさと、居心地の良さにおいては、初代マクロスの右に出るものはないでしょう。なにしろ、真面目にてきぱき仕事してるのは最前列の未沙とクローディアの二人だけで、あとはみんな、グローバル艦長を筆頭に、適当にさぼって遊んでいるという感じが……
余談ですが、職場としてハードな艦橋は、ガンダムに登場する各艦が筆頭、とくに、〈アークエンジェル〉に代表される女性艦長のブリッジは、サボったらムチでも飛んできそうな緊張感に満ちています。あの耳キン声で頭ごなしに「ローエングリン、てーっ!」なんてやられるのは、疲れるぜ、実際。ファーストガンダム〈ホワイトベース〉のブリッジは、ブライトさんが超堅苦しいですが、わりとブリッジ要員たちは、彼の目の届かないところで思いきり羽目をはずしていそうですね。リュウさんなんか、意外とコンソールの陰で、キッカたちと一緒に面子やベーゴマやってそうです。スタトレの〈エンタープライズ〉級のブリッジは実際には天井が低すぎて、かなりの圧迫感があり、しかも敵の砲火を受けるたびにコンソールが火を吹くので、おちおち安心して座っていられません。対して超広々としているのがトップをねらえ!〈エクセリヲン〉のブリッジ。しかしなんとなく回転寿司とかファミレスのテーブルにいるような、開放的すぎるレイアウトに違和感を感じさせます。そこで、最もアットホームなレイアウトで、椅子もリクライニングでらくちんなのが、タイラーの〈そよかぜ〉。艦長はたいてい不在か居眠りなので、職場としては理想的な、低ストレス艦橋というべきでしょう。にしても、好対照なのは、宇宙戦艦ヤマトと機動戦艦ナデシコのブリッジ。ヤマトの艦橋がアナログメーターとレバー相手の肉体労働ならば、ナデシコの艦橋は中高年にとってはテクノストレスの地獄ですね、きっと。しかし、なんといっても構造が最もゲーセンに近く、目の前のコンソールに否応なく没入させられるのは、突撃艦バースロイルのブリッジだと、私は断言したい。テクノストレスどころかテクノシンドロームで、撃沈されるまでブリッジの席から立てない電脳ラリパッパの乗組員がいても不思議はないという気がします。戦うことが目的の軍艦なのだから当然ではあるのですが、職場としての効率うんぬんよりも、おそらく、“過剰適応者が続出して恐い”という勤務環境ではないでしょうか。
 
145●ファーンボロ星系
この星系国家の民族は伝統的にイベント好きのようで、年中、航空宇宙ショウやなんとかイリュージョンとか、アイドルコンサートを開いている。中古宇宙船の火の玉レースで有名なリノ星系と並ぶ航宙おたくのメッカである。
 
151●磁力のクッション
通常の航空機とは違って、全長数百から千メートルもの巨大な航宙船が地表の空港へ降りようとしたときに大きな問題になるのは、「どうやってその巨大な船体を無事に受けとめるか」であり、また離陸のさいに「どうやって船体を持ち上げて、その首を上に向けてやるか」である。翼を使ってふんわり滑空するわけにはいかないし、そのために翼を常備しているわけではない。また大気密度も気候も各星でまちまちである。
そこで使われるのが、ごく短時間の、強い磁力の反発力だ。航宙船にはもともと、細かな宇宙塵など障害物を避けるために、船体に細いコイルを巻いて、船体そのものを電磁石と化して磁界バリアを張る構造になっている。
これを利用して、地表の滑走路に磁性体を敷き詰めておき、降りて来たり、飛び立つ航宙船に対して、強烈な反発磁界のクッションを作ってやるのである。
したがって、このクッション装置を施工していない土地や海上では、運良く降りられても、自力で飛び立つのはかなり困難になる。どうしても宇宙に上げたい場合は、仮設で翼をつける工事が行なわれる。
 
155●S・ドラケン
SはスペースのSではない。スーパーのSであり、製造元であるサーブ社のSである。
 
160● マリーエン
全銀河を席巻している超高級嗜好品ブランド。ただし一社の独占ブランドではなく、伝統的な職人ギルドが使用権を管理しているようだ。セレブ志向のおじさまおばさまたちが大枚をはたいて求める、虚栄心のカタマリとも言うべき高嶺の花。
 
160●タレントゥム
古代ローマ時代の貨幣呼称ですが、《連邦》では金貨に関してこの名称を用いている。
 
174●君の人生を生きよ
ウィリアム・サローヤンの戯曲『君が人生の時』にこれに似た言い回しの巻頭詩があるが、内容は異なっている。ラシルの仕事に関して最も大切な仲間の絆は“裏切らないこと”であり、したがって、仲間の信頼を欺く者は許さない。個々の程度の差はあるが、通常、裏切ることによって仲間を死に追いやった者は、まず、義勇海賊の世界から生きて退職することはできないだろう。
 
 
 
更新日時:
2006/02/15

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